(※写真はイメージです/PIXTA)
車を失った後の2つの大問題
車を手放した翌月。和雄さんの生活費は目に見えて変わりました。
病院への往復はタクシー。
買い物もタクシー。
釣り仲間との集まりに行くにもタクシー。
月額の交通費は、それまでのガソリン代や維持費を大きく上回る約3万5,000円になりました。年金16万円から、食費4万円、光熱費1万8,000円、通信費8,000円、医療費1万5,000円を差し引くと残りは多くありません。そこへ交通費が加わります。
さらに事故後の精神的な落ち込みから外食が増え、支出管理も甘くなりました。
「車があったころのほうが金はかからなかった」
和雄さんはそう漏らしました。しかし、遅かれ早かれ、こうなったと由美さんは思っています。
由美さんは地域包括支援センターに相談しました。そこで初めて、自治体の移動支援サービスや高齢者向け送迎制度の存在を知ります。通院支援や乗合交通など、利用できる仕組みはいくつもありました。
家計への負担は幾分減ることが期待されます。しかし、運転をしていたころと比べて和雄さんは気力を失い、年齢以上に年老いた気がします。足元がおぼつかなくなり、以前よりも歩幅が狭くなったように感じます。
「免許を返せというだけでは、いけなかった」
由美さんは悔やみました。免許返納の話をするとき、車を失った後の代替手段まで具体的に示せていなかったからです。「危ないからやめて」だけでは、和雄さんは納得しなかったでしょう。運転を続ける理由は、自尊心そのものだったからです。
高齢ドライバー問題は、事故そのものだけがリスクではありません。
まずお金の面。事故後の修理費、買い替え費用、生活手段の再構築、増え続ける移動コスト。そうした支出が老後資金を削っていきます。
そして老化・認知症。国立長寿医療研究センターの調査によると、運転を中止した高齢者は、運転を継続していた高齢者と比較して、要介護状態になる危険性が約8倍に上昇することが明らかになったといいます。
車を失った後、どう暮らしていくのか。その準備まで含めて考えなければならない現実があります。