厚生労働省のデータによると、年金の「繰上げ受給」を選択する人はわずか0.7%にとどまります。多くの人が「減額される損」を避けるなか、定年退職と同時に完全リタイアしたトシゾウさん(仮名・65歳)は、60歳で年金を前倒しで受け取る道を選びました。年金事務所で「一生減りますよ」と忠告され、受給額が月10.5万円に減額されるデメリットを受け入れてまで早期受給を貫きましたが、その表情に後悔の色は一切ありません。7,000万円もの資産を持つ彼が、お金の損得を捨ててでも手に入れたかったモノとは。
年金事務所の「一生減りますよ?」にも迷わず60歳で〈繰上げ受給〉を選択。65歳男性が〈年金月10.5万円〉に減額でも後悔ゼロなワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「時間がいくらあっても足りない」60歳で完全リタイアを決意

地方都市の賃貸マンションで一人暮らしをするトシゾウさん(仮名・65歳)。5年前、30年以上勤めた中堅商社を定年退職し、「これ以上働くのにはうんざりだ」と再雇用の打診もきっぱり断りました。

 

トシゾウさんは完全リタイアしてからの5年間、まさに怒涛の日々を送りました。

 

退職してすぐに中古のミニバンを車中泊仕様にDIYし、1ヵ月かけて九州の温泉を巡る気ままな旅に出発。さらに、若いころに訪れたタイへ再訪したり、昔から興味があったピアノや油絵を始めたりと、自由な時間を満喫しているそうです。

 

「働いていたころに『いつかやろう』と後回しにしていたことを、次々と実現できています。本当に時間がいくらあっても足りないくらいですよ」

「生活費の足しになれば十分」資産7,000万円を背景に、年金の〈繰上げ受給〉を選択

トシゾウさんの軽やかなリタイア生活は、若いうちから培ってきた経済基盤があってのものです。

 

退職金と長年積み立ててきた投資信託などを合わせた金融資産は、現在約7,000万円。生活費として定期的に取り崩していますが、長期運用の複利効果もあり、口座の数字が急激に減るような焦りとは無縁です。

 

この安心感を土台に、トシゾウさんは60歳で年金の「繰上げ受給」を決断しました。本来65歳から月約15万円を受け取れる予定でしたが、受給の前倒しによって30%減額され、受給額は月約10万5,000円に(※)。

※年金の繰上げ減額率は、昭和37年(1962年)4月1日以前生まれの方(トシゾウさんの世代)は最大30%、同年4月2日以降生まれの方は最大24%となります。

 

年金事務所の窓口では、「受け取れる年金が一生涯減ってしまいますが、本当によろしいでしょうか」と、繰上げ受給のデメリットを強調されました。

 

しかし、トシゾウさんは「生活費の足しになれば十分」と迷いはありませんでした。