(※写真はイメージです/PIXTA)
家族に見送られ、スーツ姿で向かった先
辞めた直後は、毎朝7時に娘から「パパ、頑張ってね!」と見送られ、一駅離れた公園のベンチにボーっと座り、夜には帰宅していました。
1週間が経過すると、さすがに収入がなくなれば妻から問い詰められるだろうと、ハローワークへ行くことに。ハローワークでは、失業した場合に年齢や働いた期間や退職理由などによって求職活動中の生活保障として基本手当を受けることが可能です。Aさんは、とりあえず求職の申し込みをすることで再就職まで基本手当(いわゆる失業保険)を受給することにしました。
それからも、家族に怪しまれないよう朝7時にスーツで家を出る生活は続きます。「ハローワーク」の開門を待つAさんの表情には、日を追うごとに焦燥感が色濃くなっていきました。
「家族に知られる前に次の仕事をみつけなければ……」自分を追い詰めるAさんに、ある朝、ハローワークの職員から声を掛けられました。
「一度、キャリアコンサルティングを受けてみてはどうですか?」
実はハローワークでは、自身のこれまでの職務経歴や強みを整理する「ジョブ・カード」を活用したキャリアコンサルティングを無料で実施しています。自分自身のこだわりや強み、価値観に気づくきっかけとなることもあり、自己理解することで前へ進む原動力になるケースも少なくありません。
「やみくもに探しても、長続きしなければ再就職しても意味がないかもしれない。なにか転機になれば……」そう思ったAさんはキャリアコンサルティングを受けることに。相談の場では、Aさんは生まれて初めて、これまで一人で抱え込んできた苦しみを他人に打ち明けることができました。「高卒」という言葉に縛られ、ネガティブ思考に陥っていたこと、前職で受けた尊厳を傷つけられる嫌がらせ、そして「娘の教育費だけは絶対に絶やしたくない」という切実な親心。
かつての職場で受けた嫌がらせは、Aさんの心に深いトラウマを植え付け、自信をすっかり奪っていました。しかし、コンサルティングを通じて自分のこれまでのキャリアを客観的に棚卸ししたことで、自分が培ってきた確かな経験や「家族のために踏ん張れる」という本当の強みに気づくことができたのです。自己理解が深まったAさんの表情には少しずつ生気が戻り、再就職活動に対して前向きな一歩を踏み出せるようになりました。
40代~50代の転換期を一人で抱え込まないために
昨今の物価高による家計の逼迫に加え、教育費のピークや住宅ローンの返済など、特に40代は「増える支出」と「削れない支出」の板挟みになりやすい世代です。仕事面でも中堅や役職者としての重責を担う一方で、セカンドキャリアに向けた方向転換を迫られる、人生の大きな岐路でもあります。
だからこそ、予期せぬトラブルや挫折に直面したとき、責任感の強い人ほど「自分がなんとかしなければ」「家族を不安にさせてはならない」と、問題を一人で抱え込んでしまいがちです。
しかし、焦りと不安で視野が狭くなっているときには、どんなに考えてもみえてこない選択肢があります。心が折れてしまいそうなときこそ、一人で抱え込まず、ハローワークの相談窓口をはじめ、世の中には頼れる専門家や制度が必ず存在します。ときには他人に弱音を吐き、客観的なプロの視点を入れることが、暗闇のなかに新しい道を切り拓くきっかけになるはずです。
〈参考〉
総務省統計局:令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001662655.pdf
キャリア形成・リスキリング相談コーナー
https://carigaku.mhlw.go.jp/icc/
総務省統計局:第3章 年齢階級別に見た暮らしの特徴
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表