キャリアアップ転職や昇給によって額面年収が上がれば「これで生活が潤う」「将来の不安が減った」と胸躍るでしょう。しかしなかには、日本の税金の仕組みにより、手取り額が思うように増えない、むしろ減ってしまったという事態に陥るケースも……。本記事では、Aさんの事例から、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、ライフステージの変化がもたらす意外な税負担について解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
「給与明細を二度見しましたよ…」転職で年収200万円アップに成功した53歳男性。“月14万円手取りが増える”と妻と喜ぶも…翌々年、“手取りが月3万円減った”まさかの理由【社労士FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

キャリアを重ねた53歳デザイナー、先輩からの嬉しい誘い

デザイン会社で働くAさんは、現在53歳。大学でデザインを学び、卒業後は広告代理店に就職しました。当時の大卒男子の平均初任給が19万〜20万円ほどだった約30年前において、Aさんが提示された初任給は25万円。当時としてはかなりの好条件でした。持ち前のセンスを発揮し、クライアントから制作物が高く評価されるにつれて、給与や賞与も順調に上がっていきます。

 

業種的に、スキルアップの手段として転職や独立開業を選ぶ人が少なくありません。Aさんもそのうちの一人。30歳で一度独立し、個人事業主としての道を歩みはじめました。しかし、収入が不安定になりがちだったこともあり、35歳のときに業界の知人からの声掛けをきっかけに、再び会社員として働く道を選択します。

 

それからのAさんは、5年ほどを目安に転職を繰り返してきました。ところが近年は、転職をしても思うように給与が上がらなくなり、「そろそろ次の職場を最後にすべきか。それとも、定年のない個人事業主にまた戻るべきか」と、今後の身の振りに頭を悩ませていたのです。

 

そんなある日、以前一緒に仕事をしていた先輩とイベントで再会します。お互いの近況を報告し合うなかで、Aさんが「いまの会社に就職したものの、子どもが大学生になって物入りで大変ですよ」と苦笑い混じりにこぼしたところ、先輩から思いがけない言葉が返ってきました。

 

「Aさんの仕事ぶりは、昔からよくわかっているよ。実はうちの会社は規模こそ小さいけれど、いま人手を探しているんだ。アットホームで環境はいいと思うし、給与もある程度がんばって出すよ。うちで働いてみないか?」

 

提示された待遇は想像以上によく、なにより自分のこれまでのキャリアを認めてくれたことが胸に染みました。Aさんは、その誘いに二つ返事で快諾します。