40代~50代は、子どもの教育費がピークを迎え、昨今の物価高も相まって「絶対に削れない支出」に追われる家計の正念場です。だからこそ、仕事で問題を抱えても「家族に心配をかけられない」と一人で悩みを抱え込み、深い孤立に陥るミドル世代が少なくありません。本記事では、Aさんの事例から、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、ミドル世代の家計とキャリアの実態を紐解いていきます。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
「パパ、お仕事頑張ってね!」月収35万の中堅社員・45歳父が、娘に見送られ向かった“意外な場所”…朝7時にスーツで家を出て、「ハローワーク」の開門を待つ切実な理由【社労士FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家族のために辛酸を舐めてきたが…

総務省の「令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要」における「世帯主の年齢階級別家計収支」をみると、40代~50代の世帯はほかの世代に比べ、教育費の支出割合が突出して高いことがわかります。40代の「教育」の支出割合は5.9%、50代は7.1%です。世帯主の年齢階級別消費支出(総世帯)によると、消費支出が最も多くなるのも50代の世帯です。近年の物価上昇の波は教育費にも確実におよんでおり、家計の大きな負担となっているのが現状です。

 

特に子どもが中学校や高校に在学している世帯の割合が高い40代の世帯では、ほかの年代に比べ、学習塾の月謝といった「補習教育」のほか、学校給食や文房具などを含む「その他の教育関係費」の支出が多くなっています。

 

現在45歳のAさんも、まさにこの「削れない教育費」と、自らのキャリアの狭間で人知れず苦悩を抱え込んだ一人です。

 

Aさんは高校を卒業してから実社会に出て、これまで実直に働いてきました。しかし、職場の人間関係や仕事内容が合わない不運もあり、数回の転職を繰り返しています。学歴重視の風潮が薄れてきたといわれる現代ですが、Aさんのなかには「高卒」というレッテルがいまも重くのしかかっており、それが職場での深い悩みの種になっていました。

 

直前に身を置いていた会社での月収は35万円。賃貸マンションに住んでいるAさん一家にとって、毎月の基礎的な生活費に加え、中学生になった一人娘の教育費は「絶対に削れない費用」として家計を圧迫しはじめていました。「娘には十分な教育を受けさせて、大学に進学してもらいたい」と、厳しい職場環境でも歯を食いしばって頑張ってきたのです。

 

ところが、上司からの「高校卒業だからできないのか」「頭を使う職業より身体を使った仕事が合っているのでは」といった度を越した嫌味や、嫌がらせを受ける毎日に耐えかねて、ある月曜日の夕方、仕事を辞めてしまいました。

 

突然の失業……。Aさんはどうしても家族に打ち明けることができませんでした。Aさんは退職したあとも、家族に知られたくない一心で、毎朝7時になるとこれまでどおりスーツを身にまとい、家を出ていきました。