親身になって相談に乗ってくれる銀行の担当者、自分だけに用意された応接室でのコーヒー……。「長年、教職という激務を全うした自分には、これくらいの特権がふさわしい」と勘違いした元教師を待っていたのは、なんとも残念な結末でした。
「俺はVIPだから…」〈退職金2,400万円〉62歳元教師の慢心。銀行員の甘い囁きに乗せられた「投資デビュー」の残念な結末 (※写真はイメージです/PIXTA)

銀行にとって優良顧客…丁寧な対応に勘違い

佐藤さんのように、銀行側から突然持ちかけられる「退職金運用」の提案は、「不招請勧誘」と呼ばれ、現代の金融トラブルにおける最大の火種となっています。

 

金融庁の「金融・証券投資の世界における消費者保護」に関する議論では、本人が望んでいないにもかかわらず電話や訪問で契約を迫る行為が、高齢者の資産を脅かす重大なリスクとして厳しく指摘されています。

 

これを受け、金融庁は「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」を改正し、金融機関に対して高齢顧客への勧誘・販売態勢をこれまで以上に強化するよう強く求めています。具体的には、以下のような厳格なルールが敷かれています。

 

●不招請勧誘の原則禁止:顧客からの要請がないなかでの訪問や電話による勧誘は制限されており、特にリスクの高いデリバティブ取引などは厳格に禁止されています。

 

●適合性原則の徹底:顧客の投資経験や財産状況に照らし、不適当な勧誘を行ってはならないというルールです。特に高齢者に対しては、この原則がより重視されます。

 

●「役席者」による二重チェック:75歳以上の高齢者がリスク性商品を購入する場合、担当者だけでなく役席者(管理職)の同席や、家族の立ち会いを推奨し、独断での契約を防ぐ態勢が求められています。

 

これらの保護ルールがあるにもかかわらず、なぜ佐藤さんは「失敗」したのでしょうか。

 

銀行にとってVIP待遇は、優良顧客を繋ぎ止めるための標準的な対応に過ぎません。問題は、佐藤さんがその対応を、自分に対する「特別な配慮」だと読み違えてしまったことにあります。

 

担当者の常套句に乗せられ、リスクの説明もろくに理解せず、思考停止状態でハンコを押してしまった――。リテラシーが欠如していたという一面は無視できません。

 

退職金という人生最後の大切な資産。それを守れるのは、金融庁のルールでも銀行員の誠実さでもなく、自分自身の冷静な判断力だけといえるでしょう。

 

 

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