生涯未婚率の上昇や単身世帯の増加を背景に、「おひとり様老後」は珍しいものではなくなりました。十分な収入と資産を築き、「老後資金の不安はない」と考える人も少なくありません。しかし、病気や介護といった予期せぬ出来事の前では、お金だけでは解決できない問題もあります。55歳で突然の病に直面した独身女性の事例を通して、おひとり様老後に潜む見落とされがちなリスクを見ていきます。
「私は一人でも生きていけると思っていた…」年収800万円・55歳独身女性。突然の病で知る、〈貯蓄5,000万円〉があっても埋まらない「圧倒的な孤独と恐怖」

「老後資金は十分」のはずだった

「老後のお金の心配だけはないと思っていたんです」

 

そう話すのは、都内のIT関連企業で管理職として働く佐々木真由美さん(55歳・仮名)。年収は約800万円。20代からコツコツと資産運用を行い、55歳時点で金融資産は約5,000万円に達していました。

 

15年前に都内の分譲マンションを購入。住宅ローンの残債は約400万円まで減り、月々の返済は7万円弱。管理費と修繕積立金を含めた住居費は月12万円ほどです。

 

対して、手取り月収は約50万円。生活費は月25万円前後で、毎月15万円以上を投資や預金に回していました。

 

両親はすでに他界しており、兄が一人いましたが、10数年前から疎遠でした。

 

「結婚はしませんでしたが、特に後悔はありません。仕事もあるし、お金もある。むしろ自由で気楽。一人でも生きていけると思っていたんです」

 

友人との旅行や外食を楽しみながら、自分のペースで暮らしてきた佐々木さんにとって、「老後不安」はどこか他人事でした。

 

しかし、転機が訪れたのは55歳になったばかりのころ。会社の会議中、突然右手に力が入らなくなりました。数分で回復したため、その日は帰宅しましたが、翌朝も同じ症状が現れました。受診した病院で医師から告げられたのは、一過性脳虚血発作の疑い。脳梗塞の前兆ともいわれる症状です。

 

「先生の説明を聞いている途中から頭が真っ白になりました。死ぬかもしれないと思ったんです」

 

数日後、精密検査と経過観察のため入院することになりました。