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「特別な人間」という勘違い…銀行の応接室で狂い始めた金銭感覚
公立中学校で教壇に立ち続け、62歳で定年退職を迎えた佐藤和夫さん(仮名・63歳)。長い教員生活を終え、手元に入った退職金は2,400万円。65歳からは月20万円ほどの年金も約束されていました。
「現役時代は部活動の指導や保護者対応で、資産運用なんて考える暇もありませんでした。ただ、定年後の生活を考えると、預金だけでは心許ない。そんなとき、退職金が振り込まれた直後に、銀行から電話があったんです」
後日、銀行を訪れた佐藤さんを待っていたのは、一般の窓口ではなく、重厚な扉の奥にある「VIP専用応接室」でした。
「『佐藤様のような地域に貢献された方は特別です』と。若い行員が深々と頭を下げ、高級な茶菓子を出してくれる。どこか一人の資産家として扱われる快感に、正直、舞い上がってしまいました」
担当者が提案したのは、新NISA枠をフル活用した投資信託と、退職金専用の高金利定期預金を組み合わせた「セットプラン」でした。
「最初は慎重でした。でも、最初の3ヵ月で運用資産が100万円ほど増えたんです。『先生は決断力があるから、投資の才能がありますね』とおだてられ、自分は特別な人間なのだと錯覚しました。そこからですね。もっと早く、もっと大きく増やしたいという欲が出たのは」
担当者は「分散投資として検討される方が多いです」「為替次第でリターンも期待できます」「リスクもありますが長期で見れば……」と言葉を重ねました。
説明を聞いた佐藤さんは、信託報酬(手数料)の高いアクティブファンドや、仕組みが複雑な外貨建て保険に次々と資金を投じていきます。しかし、2026年に入り市場が調整局面を迎えると、含み益は一転して数百万単位の含み損に変わりました。
慌てて銀行に行きましたが、あの時の丁寧な担当者は異動で不在。後任は「市場環境の影響が大きく出ている状況です」「ご契約時にもご説明の通り、価格は変動いたします」と淡々と告げるのみ。
さらには「長期的な視点でご判断いただく商品になります」「最終的なご判断はお客様にお願いしております」などと、自己責任であることをやんわり伝えられました。
「あれだけ親身だったのに、今はマニュアル対応だけ……。VIPだと思っていたのは自分だけでした。現在は退職金のうち、約600万円を失っている状況です」
