(※写真はイメージです/PIXTA)
「退職金があるのは当たり前」という誤解
佐藤さんのケースは、決して「運が悪かった」だけでは片付けられません。日本の労働環境において、退職金制度は法的に義務付けられたものではなく、あくまで各企業の任意制度であるという現実があります。
厚生労働省が発表した『令和5年就労条件総合調査』によると、退職給付制度がある企業の割合は74.9%です。一見高く見えますが、企業規模別にみると景色が変わります。従業員1,000人以上の企業では90.1%が制度を維持しているのに対し、30~99人規模の企業では70.1%にまで低下します。つまり、中小企業に勤める労働者の約3割は、そもそも退職金制度がない環境にあります。
「制度があっても支払われない」というケースも、決してゼロではありません。2025年度(2025年4月~2026年3月)の全国企業倒産件数は、帝国データバンクによると1万425件、東京商工リサーチの速報では1万505件。「業績不振」のほか、「人手不足」や「物価高騰」といった理由が目立ちます。
会社が破産手続きに入った場合、未払賃金の一部は「未払賃金立替払制度」によって国が立て替える仕組みがありますが、退職金については立替の対象額に上限があり、本来受け取るはずだった全額が保証されるケースは稀です。
金融経済教育推進機構の『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』によると、「老後の生活を心配していない理由」として、「退職一時金が十分だから」は14.7%で、50代世帯では22.0%に達します。一方で「老後の生活を心配する理由」として「退職一時金が十分ではないから」は16.0%、50代世帯では22.7%に達します。老後を見据える上で、退職金の有無が大きな影響を与えることは明白です。
昨今の不安定な経済情勢下では、会社の就業規則にある「退職金の予定額」を資産に組み込むのはリスクが高いといわざるを得ません。iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAを活用し、会社に依存しない形での「自分年金」を構築することが、現代の会社員にとっての必須項目といえるでしょう。
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