国土交通省の調査によると、自然環境を求めて地方移住などを実践する人が増える一方、約2割が「生活拠点の費用負担」をデメリットに挙げています。憧れの海辺や自然豊かな場所への移住には、気候や環境がもたらす隠れたリスクが存在するのです。本記事では、資産4,600万円で海沿いの地方都市へ移住したものの、塩害によるダメージや観光客の殺到に直面し、想定外の修繕費に苦しむ60代夫婦の事例を紹介します。
こんなはずでは…年金月23万円・60代夫婦が「地方移住」で後悔。憧れだった「海が見える家」で理想の老後生活から一転、〈昼間からカーテンを閉め切るワケ〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

「3年で350万円消えた」…想定外の出費の連続で、減っていく老後資金

外に停めていた車は、こまめに洗車をしてもサビが広がってブレーキがキーキーと鳴り出し、ついには車検を通すのが難しい状態に。「新車を買ってもどうせサビる」と諦め、中古車への買い替えと防錆コーティングを決断。さらに、塩を落とすためのこまめなコイン洗車場やサビ取りグッズといった出費が積み重なり、約150万円が飛んでいきました。

 

また、備え付けのエアコンの室外機やテレビアンテナも古くなっていたので、「耐塩害仕様」の新品に買い替える必要がありました。さらに、潮風で傷んでいる外壁の塗装や、サビついた給湯器の交換など、中古住宅の維持やリフォームに合計約200万円かかりました。

 

「移住してから3年で、350万円以上なくなりました。このペースで出費が続いたら、老後資金なんてすぐになくなりますよ……」

「何が映えスポットだ!」…観光客殺到で奪われた平穏な日々

さらに、追い打ちをかけたのは、自宅の周辺環境の変化でした。

 

タカシさんの家のすぐ裏手が「路地の先に海が見える、ノスタルジックな風景」として、SNSでいわゆる“映える”観光スポットとして取り上げられたのです。昼過ぎになると、家の周辺に多くの観光客が集まるようになりました。

 

「何が映えスポットだ、こっちは住んでいるんだぞ! 大勢の人間が家の周りをウロウロされて、たまったもんじゃない」

 

今では、プライバシーを守るためにカーテンは閉め切ったまま。大好きな海を眺めることさえ叶いません。

 

「海は今でも大好きです。でも、こんな生活になるのがわかっていたなら、移住なんてしませんでしたよ……」

 

美しい景色と引き換えに得たものは、資産を削っていく維持費と、見知らぬ人々の視線を気にする安らぎのない毎日でした。憧れだけで「終の棲家」を決めてしまったタカシさん夫婦は、理想とかけ離れた老後を送ることになり後悔しています。

 

[参考資料]

国土交通省「二地域居住等の最新動向について(2023年)」

内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」