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多様化する居住スタイルと見落としがちな「移住環境」
国土交通省が公表した「二地域居住等の最新動向について」によると、近年は一つの場所に定住するだけでなく、生活拠点を複数持つ二地域居住や地方移住など、暮らしのスタイルが多様化しています。
同調査において、農山漁村部での滞在を行う人の約4人に1人(24.7%)が「自然環境が豊かな場所に行きたかった」ことをきっかけに挙げており、海沿いや自然豊かな場所への移住は根強い人気があります。しかし、憧れの環境を手に入れる裏には、見えないリスクも潜んでいます。
同調査で二地域居住等の実践者にデメリットを尋ねたところ、「生活拠点にかかる費用が負担となった(家賃、税金、家財の購入など)」と回答した人が18.1%でした。自然の恩恵を受けられる一方で、建物や車へのダメージが都市部と比較して大きく、想定外の維持管理費が発生しがちです。
さらに、内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によれば、老後の備えとして25.5%の高齢者が「住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕など)」に取り組む必要があると答えました。移住先の気候や周囲の環境変化を事前に想定しておかないと、度重なる修繕費や予期せぬ外部要因によって、老後のために準備した大切な資金を大きく減らしてしまう可能性があります。
ここからは、憧れの地方移住を果たすも、想定外の出費と環境の変化に追い詰められてしまった60代夫婦の事例を見ていきましょう。
「海が見える家で余生を…」憧れの地方移住で直面した〈塩害問題〉
「海の近くでのんびり余生を送りたかっただけなのに、こんなはずでは……。正直、移住したことを後悔しています」
タカシさん(仮名・67歳)は定年退職を機に、妻のナナミさん(仮名・65歳)と海沿いの地方都市へ移住しました。
これまでの貯金と退職金を合わせた約4,600万円の資産で、海岸が目と鼻の先にある中古の一軒家を約1,800万円で購入。タカシさんとナナミさんの年金を合わせれば、月に約23万円が手に入ります。地方であれば暮らしていける目論見でした。
若いころにビーチで出会い、夫婦ともに海が好きだったため、老後は浜辺を毎日散歩して余生を過ごすのが二人の夢だったのです。こうして、理想のセカンドライフをスタートさせました。
「見て、リビングから海が見えるよ。朝から波の音を聞けて幸せ!」とナナミさんも心を躍らせ、移住直後は充実した毎日を送っていました。
ところが、生活を続けるうちに海の近くならではの問題に直面。それは、「潮風による塩害」でした。