親への恩返しや責任感から、キャリアを犠牲にしてまで在宅介護に全力を注ぐ。しかし、その献身が必ずしも円満な結末を迎えるとは限らないのが現実です。 ある女性のケースから、孤立しやすい介護の実態と、備えるべきリスクについて考えます。
「私の人生を返してよ…」介護のため〈年収800万円〉を捨てた53歳娘の末路。父の葬儀後にみた「預金通帳の取引履歴」に唖然 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護離職が招く「経済的困窮」と「共依存」のリスク

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、主な介護者が「同居の家族」である割合は45.9%にのぼり、そのうち「ほとんど終日」介護に従事している層は27.2%に達しています。このように家族一人が負担を抱え込みやすい実態がある中で、仕事との両立を断念するケースは後を絶ちません。

 

総務省『令和4年就業構造基本調査』によると、過去1年間に介護・看護を理由に離職した人は約10万6000人。毎年10万人前後で推移しています。特に佐藤さんのような50代後半での離職は、厚生年金の加入期間短縮による将来的な受給額の減少を招きます。これは看取り後の自身の生活基盤を根底から揺るがす、深刻な経済リスクとなるのです。

 

こうした自己犠牲的な介護の背景には、被介護者と介護者が密室で依存し合う「共依存」の関係があります。同居家族が主な介護者となる場合、外部の支援から孤立しやすく、精神的な疲弊が限界に達しても「自分がやるしかない」という強迫観念に囚われがちです。

 

その結果、介護という役割を喪失したあとに深刻な燃え尽き症候群(介護ロス)に陥るだけでなく、佐藤さんの事例のように、献身が報われない事実(親族間の資産配分の不平等など)に直面した際に、大きなショックを受けることも少なくありません。

 

大切なのは、介護を情緒的な愛着の問題に留めず、公的な支援を前提とした生活設計として捉えることです。親の希望を優先して離職を選ぶ前に、地域の包括支援センター等を通じて外部サービスを最大限活用しましょう。子のキャリアと資産を守る視点を持つことが、介護を終えたあとも続く自身の幸せのためには不可欠です。

 

 

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