(※写真はイメージです/PIXTA)
市営団地に住む母、通帳の異変
「なんで毎月こんなに減るの……私、何か悪いことした?」
神奈川県内の市営団地で一人暮らしをする佐藤和子さん(78歳・仮名)は、帰省した長男の健一さん(52歳・仮名)に通帳を差し出しました。
和子さんの収入は年金のみで、月約15万円。団地の家賃は2万8,000円、水道光熱費は平均1万5,000円、食費は3万5,000円程度。贅沢な暮らしとは無縁でした。
夫を8年前に亡くしたあとも、300万円の保険金と元々の貯蓄を合わせた720万円ほどを取り崩すことなく暮らしてきたそうです。
ところが半年前から預金残高の減り方がおかしくなったとのことです。
「年金が入っても、気づくと残高が減っているの。病院代が増えたわけでもないし、何を使ったのかわからない。本当に怖い」
健一さんは最初、母の勘違いだと思いました。しかし、通帳記帳をして言葉を失いました。毎月、数百円から数千円の引き落としが30件以上並んでいたのです。
動画配信サービス、音楽配信サービス、写真保存サービス、有料ゲーム、電子書籍、AIアプリ、英会話アプリ……聞いたこともない海外企業名も並んでいました。一つひとつは980円、1,280円、2,400円程度ですが、合計すると月9万8,000円。これだけで和子さんの年金収入の3分の2近くが消えていたのです。
スマホ中心の生活で起きた想定外
「そんなの契約した覚えないよ」
和子さんは困惑していました。ただ、話を聞くうちに事情が見えてきました。3年前、近所の友人に勧められてスマホを購入。コロナ禍を経て、買い物も動画視聴も連絡もスマホ中心になりました。
「無料お試し」
「初月無料」
「7日間無料」
画面に表示される案内に従い、利用登録を繰り返していたそうです。その際、携帯会社の支払い設定やクレジットカード情報が自動で連携されていました。契約そのものを認識していないケースも少なくありません。
総務省『令和7年通信利用動向調査』によると、70代のスマホ保有率は、8割を超えています。一方で、デジタルサービスの契約内容や課金体系を十分理解しないまま利用している高齢者も少なくないと指摘されています。
和子さんも例外ではありませんでした。
「無料って書いてあったから押しただけ」
その言葉を聞いた健一さんは複雑な気持ちになったそうです。母を責めることはできません。しかし、契約履歴を確認するたびに新たな有料サービスが見つかりました。解約画面にたどり着けないものもありました。海外事業者への課金は日本語表示すら十分ではありません。気づけば契約数は34件に達していました。