働き方改革の浸透によって、かつての過酷な労働環境やパワーハラスメントは是正されつつあります。しかし、ハラスメントへの過度な懸念から、現場では新たな歪みが生じています。それが、良かれと思った配慮が部下の成長機会を奪ってしまう「ホワイトハラスメント(ホワハラ)」です。ある男性のケースから、現代の組織における適切な配慮の在り方を考えます。
 「定時だから帰りな」「じゃあ会社辞めます」「えっ!?」…30歳期待のエースが、転職わずか半年で退職。優しすぎる職場で中途採用者が絶望する「ホワイトハラスメント」の正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

7割以上が「再転職」を検討…ホワハラの深刻度

厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、個人的な転職理由として(「その他」を除き)最多だったのは「収入が少なかった」で全体の10.1%。次いで「職場の人間関係」(9.0%)、「労働条件」(8.6%)と続きます。

 

高橋さんの退職動機に当てはまる「能力・個性・資格を生かせなかった」は、全体では3.8%と多くはありません。しかし、年齢別に見ていくと、20代後半で4.7%、30代前半で3.6%、そして30代後半では7.9%と跳ね上がります。 社会人として経験を積み、得た能力をさらに発揮し、高めていきたいという前向きな姿勢が、この年代には強く表れていることが分かります。

 

一方で、ハラスメントへの懸念が強まるなか、成長意欲のある層と企業側のミスマッチが起きています。これがいわゆる「ホワハラ(ホワイトハラスメント)」です。 上司が部下に対し「残業させない」「責任ある仕事を任せない」といった過剰な配慮を続けた結果、部下の成長機会ややりがいを奪ってしまう現象を指します。

 

株式会社マイナビの「中途入社1年以内の社員に聞いた“ホワイトハラスメント”に関する調査」によると、ホワハラを経験したと回答した人の転職意向は71.4%に達します。ホワハラを経験していない人の48.1%と比較すると23.3ポイントもの顕著な差があり、過剰な配慮が離職へ直結している実態が浮き彫りになりました。

 

具体的な内容としては「先輩が先回りして作業を行ってしまう」「定時退社の強制」などが挙げられており、これらは上司の善意から生じているケースがほとんどです。 また、本人の意向を確認せずに「良かれと思って」昇進や重要な役割から外す行為も報告されています。背景には、管理職側がハラスメントのリスクを恐れて部下との摩擦を避けようとする「事なかれ主義」や、一律の労務管理への固執があります。

 

企業が中途人材を定着させるためには、単なる労働時間の削減だけでなく、個別のキャリアビジョンに基づいた「適切な負荷」と「質の高いコミュニケーション」が不可欠です。 本人が望む挑戦を奪うことは、たとえ善意であっても、その労働者の将来を阻害する「ハラスメント」になり得るという認識を持つ必要があるでしょう。

 

[参考資料]

株式会社マイナビ『「中途入社1年以内の社員に聞いた“ホワイトハラスメント”に関する調査」を発表』

 

 

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