定年を機に、退職金を元手に「経営コンサルタント」として独立開業したA太さん(60歳・男性)。現役時代は大手メーカーの営業部長として広い人脈を持ち、「個人の名前でも仕事が取れる」と自信満々でしたが、会社の看板がなくなった途端に見込み客はゼロに。見栄を張って借りたオフィスの家賃で老後資金をじわじわと削られ、妻に誤魔化しながら不安な毎日を送るシニアの起業事例を紹介します。
「妻には誤魔化しています」〈退職金2,500万円〉で独立した60歳元営業部長…立派なオフィスで「1日中ネットサーフィン」して過ごし、減り続ける老後資金に絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金2,500万円で独立した元営業部長、「経営コンサルタント」として第二の人生を歩む

「これからは個人の力で稼ぐ時代。俺の人脈と営業力に資格が加われば、老後も安泰なはずだ」 

 

大手メーカーで営業部長を務めたA太さん(60歳・男性)は、定年退職を機に、これまでの仕事の経験を活かして「経営コンサルタント」として独立することを決意しました。そして定年と同時に、退職金2,500万円を原資にして個人のコンサルティング事務所を開業。

 

「自宅を事務所にするか、せめて自宅近くの小さな手ごろな物件にしてほしい。老後の生活にもお金がかかるの、わかってる?」

 

 妻のB子さん(58歳・女性)は老後資金を心配して、そう頼みました。

 

しかし、A太さんは「元営業部長がみすぼらしい場所でクライアントを迎えられない」と、B子さんの意見を聞き入れませんでした。 A太さんは退職金のうち1,000万円を使い、都心の駅前にあるオフィスを借りて豪華な応接セットを揃えることに。

 

残りの1,500万円と夫婦の貯金1,000万円が老後の生活資金ですが、A太さんは「すぐに軌道に乗るから貯金には手をつけない」と豪語していました。

 

開業当初、A太さんは現役時代の取引先や部下たちに立派な挨拶状を送り、頻繁に食事やゴルフへ誘って営業活動を行いました。しかし、コンサルの依頼は一件も入りませんでした。

 

「新しい名刺を渡すと、みんなやんわりと距離を置くんです。彼らが私の話を聞いてくれていたのは、『私個人』ではなく、『大手企業の看板』の力だったと思い知らされました。実績ゼロのシニア起業家に、大切な経営相談を任せてくれるお人好しはいなかったんです」