長引く物価高に教育費や生活費の増加が重なり、家計のやりくりに頭を悩ませるご家庭が増えています。そんな中、追い打ちをかけるように届くのが「住宅ローン金利上昇」の知らせです。多くの方が利用している変動金利ですが、「5年ルール」によって直近の返済額が据え置かれているため、事態の深刻さに気づきにくいという恐さがあります。本記事では、Aさんの事例から、住宅ローンの5年ルールの落とし穴について、FPの川淵ゆかり氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
またか!もう4回目だよ…3年後に住宅ローン「月10万4,277円→月12万1,733円」に返済額アップの月収58万円・43歳会社員父。《銀行の通知》で知らされた、陰で膨らむ「600万円の追加負担」に戦慄【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「5年ルール」の恐ろしい罠

変動金利型住宅ローンには「5年ルール」があり、世の中の金利が上がっても、5年間は同じ返済額のまま据え置かれるという仕組みになっています。そのため、金利が上がってもすぐに返済額が増えるわけではありません。

 

しかし、マイナス金利解除が2024年3月であるため、2029年春以降は返済額が上昇します。ここで、Aさんのケースをもとに、これまでの金利上昇と2029年の返済額をシミュレーションしてみましょう(※シミュレーションはAさんのケースであり、実際の返済額は借入条件・金利タイプ・銀行ごとに異なります)。

 

<Aさんの住宅ローン条件>

借入金:4,000万円

当初金利:0.525%

返済期間:35年ローン(元利均等・ボーナス返済なし)

毎月返済額:10万4,277円(5年ルールにより当面は固定)

 

◎金利上昇の推移(返済額は変わらず、内訳のみが変化)

2024年4月     0.725% 内訳(元金:8万741円 利息:2万3,536円)

2024年10月     0.875% 内訳(元金:7万6,225円 利息:2万8,052円)

2025年4月     1.125% 内訳(元金:6万8,640円 利息:3万5,637円)

2026年4月     1.375% 内訳(元金:6万1,669円 利息:4万2,608円)

 

毎月の口座から引き落とされる金額は10万4,277円のまま変わりません。しかし、内訳をみると恐ろしい事実が浮かび上がってきます。金利が上がるたびに「利息部分」が増え、その分「元金部分」の減りが遅くなっているのです。つまり、本来減っていくはずだった元金の返済が、どんどん先送りされている状態と言えます。

2029年春、ついに返済額がアップする

では、5年ルールが終わり、新しい返済額が適用される2029年4月以降はどうなるのでしょうか。

 

現在の返済額:10万4,277円

2029年4月以降の返済額:12万1,733円(+1万7,456円)

 

総支払利息と、老後のローン残高への影響

さらに深刻なのは、トータル支払い額への影響です。

 

◎総支払利息の増加

金利上昇がなかった場合:379万6,198円

4回の金利上昇後:987万900円

→ +607万4,702円

 

◎65歳時点のローン残高

当初予定:1,208万8,764円

金利上昇後:1,353万4,653円

→ +144万5,889円

 

Aさんの場合は40歳でローンを組み、完済は75歳となっています。老後まで返済が続く場合、65歳時点で1,300万円以上の残高が残ることは大きな負担です。老後までローンが残る家庭は、定年退職時にローンがいくら残るか、さらに金利上昇でいくら増えるのかもチェックしておきましょう。