「学歴なんて関係ない、実力で勝負しろ」――。叩き上げで部長まで上り詰めた男性は、受験生である長男の「早慶・MARCH全落ち」という現実を前に、自らの持論を振りかざすことはできませんでした。自らの成功体験を否定してまでも、父が息子に「浪人」を勧めた理由とは。最新のデータから、学歴格差の正体をみていきます。
早慶MARCH全滅…月収55万円「叩き上げ部長」の父が「ダメなら働け」と長男に言えなかった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「学歴は関係ない」はずだった父親の誤算

都内のインフラ関連企業で部長職に就いている佐藤浩司さん(50歳・仮名)。現在の月収は55万円ほどで、手にする給与、そして現在の地位に対しては万感の思いがあるといいます。

 

「私は地方の工業専門学校を卒業後、現場叩き上げで生き抜いてきました。自身のキャリアを『実力主義の賜物』だと自負してきたんです」

 

そんな佐藤さんには3人の息子がいます。長男の健太さん(18歳・仮名)は、大学受験に臨む高校3年生。家中がピリピリするなか、佐藤さんは「大学なんてどこに行ったっていい。大事なのは何を学び、それを武器にどう戦うかだ。もしどこにも受からなければ、いっそ働けばいい」と持論を語ってきました。

 

健太さんの第一志望は早稲田大学と慶應義塾大学。滑り止めとして、いわゆる「MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)」と呼ばれる難関私立大学をいくつか併願していましたが、結果は残酷なものでした。早慶は不合格。そればかりか、合格を確実視していたMARCHもすべて「不合格」の文字が並んだのです。

 

「正直、信じられませんでした。息子は毎日、夜10時まで塾の自習室にこもり、家に帰ってからも机に向かっていました。父親の目から見ても、誰よりも努力していたと思います」

 

全落ちは、本人にとってはもちろん、佐藤さんにとっても予想外の出来事でした。そのため、大学進学以外の選択肢はまったく想像していなかったといいます。

 

「この先、どうするのか」――。健太さんは泣き顔で佐藤さんと向き合い、「申し訳ない、もう一年チャンスをくれないか」と絞り出すような声で頭を下げました。そんな息子に対し、佐藤さんは常々口にしていた「ダメなら働け」という言葉を飲み込みました。

 

「息子の頑張りを知っているからこそ、日ごろの持論は出てきませんでした。また、大学進学以外の道を具体的にイメージしたとき、頭に浮かんだのは自身の苦い経験だったんです」

 

「私自身、専門卒として入社したあと、昇進のスピードや最初の配属(アサイン)で、大卒組との明確な差を何度も目の当たりにしてきました。だからこそ人一倍努力した自負はありますが、息子には、そのようなしなくてもいい苦労はしてほしくない。学歴なんて関係ないと口では言っていても、結局は学歴が重要であることを、今回の件で痛感させられました」

 

健太さんは来年の受験に向けて、すでに大手予備校への入学を済ませたということです。