(※写真はイメージです/PIXTA)
「円満」の裏にある夫婦の認識の差
加藤さん夫妻の事例は、定年後の夫婦が直面する「パートナーへの理解度」の差を象徴しています。明治安田生命保険相互会社が2023年11月に発表した「いい夫婦の日に関するアンケート調査」では、生まれ変わっても「今と同じ相手と結婚したい」と回答した割合が、夫の50.4%に対し、妻は38.2%に留まっています。この約12ポイントの差は、夫が「自分たちは分かり合えている」と満足している一方で、妻の側には夫が気づいていない本音や、自分だけの目標があるという夫婦間の「温度差」を裏付けています。
この温度差を生む最大の要因が「コミュニケーションの不足」です。同社の調査(2023年発表)によると、夫婦円満と回答した世帯の平日1日あたりの平均会話時間は145分であるのに対し、円満ではない世帯では約41分と、3倍以上の開きがあることが報告されています。
大輔さんが、妻が20年以上もフランス語を学んでいた事実にすら気づかなかった状況は、まさにこの「会話の絶対量の不足」が長年にわたって蓄積されてきた結果といえます。仕事に邁進し、家庭のことを妻に任せきりにしていた大輔さんにとって、家は「安らぐ場所」であったかもしれませんが、その思いは一方通行だったのかもしれません。
このまま会話のない状態が続けば、定年後の夫婦生活は不仲に直結します。十分すぎる老後資金があっても、互いの内面への無関心は埋められません。豊かな老後のためには、「阿吽の呼吸」という幻想を捨て、対話によって認識のズレを解消する努力が不可欠です。
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