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「機能の過剰供給」が招く、高齢者の生活不全
国土交通省「2023年 住生活総合調査」によると、居住中の住宅におけるバリアフリー化の実施率は56.0%に達し、過半数の住宅で手すりの設置など何らかの対策が取られています。特に高齢化の進行に伴い、手すりや段差解消などの対策が普及しました。なお、建物種別では一戸建てで47.0%、分譲マンション等の共同住宅で52.4%がバリアフリー化されています。
国土交通省は、バリアフリー法(高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準)の改正を行い、より利便性と安全性の高い住環境を推進しています。こうした流れの中でトレンドになっているのが、IoT技術やロボット技術を活用した製品・技術の導入です。
●IoTを活用した生活機器
スマートフォンや音声で操作できる自動照明、自動開閉カーテン、スマートロック(外から鍵を開けられる機能)
●次世代型手すり・スロープ
センサーが人の動きを検知して補助する手すり、住宅環境に合わせて角度調整可能なスロープ
●見守りシステム
高齢者の生活動線を検知し、異常時に通知するセンサー
●高性能・バリアフリー設備
ヒートショック対策も兼ねた温水式浴室暖房乾燥機、自動洗浄機能付きトイレ
最新機器を取り入れたものの、高齢者が使いこなせるかは別問題です。内閣府「令和3年度 第9回 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、「情報機器を使わない」と回答した各国の60歳以上の人に理由を尋ねたところ、「使い方がわからないので、面倒だから」が50.3%にのぼりました。これは同調査で比較しているアメリカ(27.8%)やドイツ(40.6%)、スウェーデン(40.5%)よりも高くなっています。日本の高齢者は欧米諸国と比べても、最新のデジタル機器に抵抗を感じやすいといえるでしょう。
解決の鍵の一つは、機能の「追加」ではなく「厳選(引き算)」です。多機能モデルは高齢者にとってパニックの火種になりかねません。たとえば、最新IHでも階層メニューがある液晶式は避け、直感的な「ダイヤル式」や火力が視覚化されるモデルを選ぶ。音声操作も全自動化はせず、従来の物理スイッチも残すハイブリッド型の配慮が、本人の混乱を防ぎます。
厚生労働省の「自立支援介護のガイドライン」が警鐘を鳴らすように、過剰なサポートは本人の能力を奪う「廃用症候群」を招く恐れがあります。良かれと思ったリフォームが「自立」を奪わないよう、使う本人の認知特性に合わせた慎重な選択が求められています。