生命保険文化センターの「2025年度 生活保障に関する調査」によると、50代男性の38.2%が「親の介護が必要となること」に不安を感じており、同時に43.6%が「老後の生活が経済的に苦しくなること」に不安を抱えています。自分たちの老後資金も心配ななか、親の介護費用まで背負う現役世代の負担は親世代の想像を超えるものでしょう。本記事では、事例をもとに同居介護のデリケートな家計問題の実態に迫ります。※人物名はすべて仮名です。
「自分だけいい顔をして…」孫に小遣いを乱発する〈同居の79歳父〉へ恨み節。実の息子(50歳)を生活苦に追い詰める老親のプライド (※写真はイメージです/PIXTA)

祖父が孫に渡す「お小遣い」の出所

「おじいちゃん、いつもありがとう!」

 

社会人になり、東京で一人暮らしをはじめた息子が帰省するたび、家には明るい声が響きます。手渡されているのは、数万円の入ったポチ袋。それを嬉しそうに受け取る息子の姿と、どこか誇らしげに目を細める父親(79歳)の姿。

 

その光景を、長男のマサハルさん(50歳)は、胸が締め付けられるような思いでみつめています。

 

(親父があげているその小遣い、もとはといえば……)

 

口に出せない割り切れない思いが、マサハルさんをもどかしい思いでいっぱいにさせていました。高齢の親との同居介護を選ぶ現役世代は少なくありませんが、そこには「家計の共有」というデリケートで根深い問題が潜んでいます。

食費だけでは足りない、同居介護の「見えない赤字」

マサハルさん一家が、一人暮らしをしていた父親と同居を始めたのは数年前のこと。母親が亡くなって少ししてから、父親に要介護認定が下り、生活のサポートが必要になったためです。

 

現在のマサハルさん世帯の生計は、マサハルさんの給与、妻のパート代、そして父親の年金をすべて合算して成り立っています。父親からは毎月、一応「食費」という名目で一定の金額を家計に入れてもらっています。そのため父親自身は、「自分の年金の範囲内で、息子夫婦に迷惑をかけずに自立して暮らしている」と思い込んでいる節がありました。

 

しかし、現実は違います。高齢の親と同居するうえで発生するコストは、食費だけでは到底収まりません。

 

・毎月の医療費やデイサービスの利用負担金

・外出時の車での送迎や、通院にかかるガソリン代

・熱中症や冷えを防ぐため、父親の部屋で常に稼働しているエアコン代

 

これらの積み重なると重い支出は、すべてマサハルさん夫婦の収入から持ち出しています。計算すれば、父親の家計は完全に赤字。しかし、父親には「年金だけでは足りていない」という認識が一切ありません。

 

さらにマサハルさんをモヤモヤさせるのが、たまに家族全員で出かける外食や旅行での、父親の振る舞いです。

 

息子が帰省した週末、みんなで少しいい和食店へ行ったときのこと。会計時になると、父親は伝票を奪い取り、「今日はワシが誘ったんだから、ここはワシが払う」と、息子やマサハルさんの妻の前で財布を開くのです。息子は「おじいちゃん、ごちそうさま!」と大喜び。父親も満足げに鼻を高くします。

 

父親が「自分の金」だと思って使っているそのお金は、父親自身の医療費や電気代を、マサハルさんが裏で肩代わりしているからこそ、手元に残っているお金に過ぎません。

 

実質的にマサハルさんの財布からお金が流れているだけなのに、美味しい手柄だけをすべて父親に持っていかれる理不尽さに、マサハルさんは虚しさを隠せませんでした。