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住居費は下がったが…重くのしかかる「想定外の固定費」
裏目節男さん(仮名・45歳)は、都内のIT企業に勤める会社員です。妻の甘子さん(仮名・43歳)も事務職として働いており、世帯年収は約800万円。決して少ない収入ではありませんが、都内のマンション価格は高騰し続けており、マイホームの夢は半ば諦めかけていました。
「都内で数千万円の住宅ローンを組んで、一生カツカツの生活を送るのはごめんだと思ったんです。それなら、リモートワークを活用して物価の安い地方へ移住し、ゆとりのある生活を送ろうと夫婦で決めました」
裏目さんが選んだのは、都心から新幹線や車で数時間離れた地方の戸建て物件でした。購入価格は1,700万円。都内のマンションの3分の1以下の価格で広い家が手に入り、最初は「賢い選択をした」と夫婦で喜んでいました。
しかし、生活が始まるとすぐに「見えない出費」の多さに直面します。最大の誤算は、車社会における移動コストでした。交通網が発達していないため夫婦で1台ずつ車を所有せざるを得ず、2台分の自動車保険、車検代、そして毎月の高額なガソリン代が家計を圧迫し始めました。都内で暮らしていたころは公共交通機関での移動だったため、車に関する費用が想像以上だったと驚きました。
生活費を抑えるために地方移住したはずが、都内に逆戻りの末路
想定外の出費はそれだけではありませんでした。
「光熱費の負担もきついです。都市ガスではなくプロパンガスの地域だったため、冬場のガス代は都内時代の2倍以上に跳ね上がりました……」
近所に大型スーパーやドラッグストアがないため、日常の買い物にも車で往復1時間かかります。
「買い物のたびにガソリン代がかかるので、週末にまとめ買いをするようになりました。でも、買いすぎて食材を腐らせてしまうことも多くて。足りない日用品をネット通販で買おうとしても、一部の地域は送料が追加でかかることがあり、ちっとも節約になりません」
生活費を抑えるために移住したはずが、車の維持費や水道光熱費が積み重なり、トータルの支出は都内での賃貸暮らしのころとほとんど変わらない、あるいはそれ以上になってしまったのです。次第に「今月の家計もギリギリだ」といったお金の不安が会話の中心となり、休日に出かける余裕もなくなっていきました。
「こんなはずじゃなかった……。毎日お金の計算ばかりで、生活の質は下がる一方です」
精神的な余裕を失った裏目さん夫婦は、移住からわずか3年で家を売りに出すことを決断しました。現在は都内の賃貸アパートへ戻り、失った貯金を取り戻すために夫婦でフルタイム勤務を続けています。