共働き世帯の増加に伴い、夫婦二人で高額な住宅ローンを組む「ペアローン」が普及しています。しかし、この仕組みは離婚というリスクを想定して設計されていません。別居や離婚が決まった際、物件の売却価格がローン残高を下回れば、家を売ることもできず、多額の債務が個人の再起を阻む重い負担となります。ある男性のケースを見ていきます。
家さえ買わなければ、こんなに泣くことはなかったのに…7,000万円の家が50歳サラリーマンを縛る「ペアローン離婚」の残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「共働き」が前提のペアローン…離婚時に直面する「売れない・住めない」の袋小路

佐藤さんのようなケースは、決して特殊なものではありません。不動産価格が高騰し、単独の年収では手が届かない物件が増えた結果、夫婦二人の信用を合算して限界まで借り入れる「ペアローン」を選択する世帯が増えているためです。

 

住宅金融支援機構が2026年1月に発表した「住宅ローン利用者調査」によると、住宅ローン利用者のうち「ペアローン利用者」は24.1%、「収入合算利用者」は14.6%。4割弱が夫婦「2馬力」でマイホームを実現しています。

 

また年齢別で見ていくと、20代では計56.6%に達し、30代で45.3%、40代で30.1%、50代以上で24.7%となっています。しかし、厚生労働省『令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)』によると、年間の離婚件数は約18万6,000組にのぼり、住宅ローン完済までの約35年という長期間、家族の形態が不変であることは絶対ではありません。

 

新築戸建ての場合、購入直後に建物の価値が大きく下落する傾向があり、佐藤さんのように数年で離婚に至った場合、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」状態に陥るリスクが高いのが実情です。

 

この場合、不足分を現金で充当できなければ抵当権を抹消できず、通常の売却は不可能。その結果、どちらか一方が単独年収では到底見合わない返済を抱え続けるか、最悪の場合は競売や任意売却といった、個人の信用情報を毀損する選択肢しか残されません。

 

かつては「資産」と考えられていた持ち家が、ライフスタイルの変化によって個人の再起を奪う負債へと変貌する――。不動産選びにおいては、利便性や広さ以上に、「いつでも損をせずに手放せるか」という、万一を想定した出口戦略が不可欠となっています。