(※写真はイメージです/PIXTA)
「一人一年金」の原則と、遺族年金の計算方法
恵美子さんが直面した現象の背景には、日本の年金制度における「一人一年金」の原則と、2007年(平成19年)の法改正による「老齢厚生年金優先支給」のルールがあります。多くの人が「自分の年金+遺族年金」という2階建ての受給を想像しますが、実態は異なります。65歳以上の配偶者が遺族厚生年金を受け取る際、まずは「自分自身の老齢厚生年金」が全額支給され、遺族厚生年金の額がそれを上回る場合にのみ、その「差額」が加算される仕組みになっているのです。
実際に恵美子さんのケースを簡略化して計算してみましょう。
夫の厚生年金: 月13.2万円(老齢基礎年金を除く)
夫死亡時の遺族厚生年金(3/4): 月9.9万円
妻(恵美子さん)の老齢厚生年金: 月8.2万円(老齢基礎年金を除く)
65歳以上で老齢厚生年金の受給権がある場合は、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」と「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1と、自身の老齢厚生年金の2分の1の額を合算したもの」を比較し、高いほうが遺族厚生年金の額となります。恵美子さんの場合は、月9.9万円が計算上の額となります。
ただし、前述の通り、まずは恵美子さん自身の老齢厚生年金が優先して支給されます。遺族厚生年金として実際に受け取れるのはその差額となるため、実質的には「9.9万円 - 8.2万円 = 1.7万円/月」の加算にとどまるのです。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均受給額は基礎年金を含めて月15万289円。男性の平均受給月額は16万9967円、女性は11万1413円です。
近年、女性の社会進出により「自分の老齢厚生年金」が増える傾向にありますが、それは同時に、受け取れる「遺族厚生年金の差額」が減ることを意味します。遺族年金のルールは、もともと専業主婦世帯が多数を占めていた時代に作られたもの。共働きが主流となった今、現役時代に保険料を納め続けてきた女性ほど、制度に対する不公平感を抱きやすい構造になっています。