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亡父の意思を尊重し「立派な葬儀」を試みたが…
佐藤恵子さん(64歳・仮名)は、半年前、92歳で亡くなった父・一郎さん(仮名)の葬儀を取り仕切りました。 一郎さんは生前、「長男として親戚や町内の方に恥ずかしくない最期を。祖父の時と同じように送り出してくれ」と、具体的な希望を恵子さんに託していました。20年前に他界した祖父の葬儀は、参列者が100人を超える大規模なものだったからです。
恵子さんは父の遺志を尊重し、大型斎場を予約。祭壇は最高ランクの胡蝶蘭で埋め尽くされる豪華なものを選び、返礼品や料理も相応のグレードで準備を進めました。「父の面目を保ち、一族に恥をかかせてはいけない」という一心でした。
葬儀当日、受付には親族や町内会の人たちなど、総勢80人近い参列者が顔を揃えました。人数としては形が整ったものの、式場内はどこか所在なげな空気に包まれています。92歳の一郎さんと、若い親戚世代や近隣住民との間には、生前の深い交流がほとんどなかったためです。
さらに恵子さんを落胆させたのは、葬儀の後の「精進落とし」の席でした。 「すみません、この後予定がありますので」「足が悪いので、ここで失礼します」 そう言って次々と帰宅する参列者たち。結局、広い宴席に残ったのは、恵子さんの家族といとこ数人のみでした。
目の前には、一人前1万円を超える豪華な折詰や刺身の盛り合わせが、手付かずのまま何十人分も並んでいました。 「これ、どうするの……?」 恵子さんの息子がポツリと漏らします。
最終的な葬儀費用は、追加のオプションを含めて総額350万円。一郎さんは月18万円の年金を余らせるほどの倹約家で、十分な預貯金もありました。しかし、葬儀前に口座から現金を引き出すことができず、一時的とはいえ恵子さんが全額を立て替える羽目になったのです。
さらに四十九日を前に、恵子さんは東北にある先祖代々の墓の管理問題に直面します。 「母さん、あんなに遠い墓地、俺は管理しきれないよ」 息子の言葉に、恵子さん自身も「そうよね……」とうなずくしかありませんでした。
その後、恵子さんは自宅から電車で通いやすい最新の納骨堂を見学しました。そこは明るく、手ぶらでいつでもお参りができる利便性がありました。 「お父さん、ごめんね。私たちの都合を優先させてもらうわ」 恵子さんは先祖代々の墓を「墓じまい」し、父をその納骨堂へ移す決断をしたのです。