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熟年離婚の代償と、消えた「加算額」の行方
佐藤和子さん(65歳・仮名)は、2024年4月の誕生日を機に、35年間連れ添った夫・正雄さん(68歳・仮名)との離婚を成立させました。正雄さんは現役時代、大手メーカーに勤務しており、和子さんは一貫して専業主婦として家庭を守ってきました。
和子さんの手元に残る公的年金の見込み額は、自身の老齢基礎年金と年金分割による厚生年金を合わせ、月額約13万円です。離婚の引き金となったのは、正雄さんが退職金を手にした際に放った「お前は一円も稼いでいないのだから、分配に文句を言うな」という一言でした。
和子さんは結婚当初から、正雄さんの高圧的な態度や家事・育児を当然視するモラハラ的な言動に耐え、不満を心に押し込めてきました。しかし、長年の献身を全否定するその言葉が決定打となり、積もり積もった感情が限界に達したのです。和子さんは家裁での調停を経て、法的に定められた「3号分割」および「合意分割」を滞りなく完了させました。
しかし、65歳になった和子さんのもとに届いた年金決定通知書を見て、彼女は愕然としました。事前に年金事務所のシミュレーションで確認していたはずの「振替加算」が、支給額に含まれていなかったからです。
「離婚すれば年金はきっちり半分もらえる。そして『振替加算』もしっかりと上乗せされると思っていました。手続きはすべて社会保険労務士や弁護士の指示通りに進めていましたから……。なぜ私だけが、もらえるはずのお金を失わなければならないのでしょうか」と、和子さんは語ります。
振替加算とは、一定の要件を満たす妻が65歳になった際、夫の加給年金が妻自身の基礎年金に上乗せされる制度です。和子さんの場合、年間の受給権は大きな金額になるはずでした。
しかし、離婚のタイミングが「65歳の誕生日」より前であったことで、受給要件である「夫による生計維持」が解消され、加算が全額消滅するという事態に陥りました。正雄さんは「自立したんだから自分で何とかしろ」と突き放し、和子さんは現在、月13万円の年金から家賃と光熱費を捻出する、想定外の生活を余儀なくされています。