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年収3,000万円・外資系エリートの転落
外資系金融機関でディレクター職にあった佐藤健一さん(54歳・仮名)。彼が手放したのは、15年前に昇進記念として120万円で購入した腕時計、ロレックスの「デイトナ」でした。売却価格は420万円。かつての月収(額面250万円・手取り160万円)の約2.6倍に相当するこの現金は、現在の佐藤さんにとって、約半年分の生活費を補填する貴重な資金となっています。
佐藤さんは4年前、50歳の時に組織改編に伴うリストラの対象となりました。当時の年収はベース給とインセンティブを合わせ、3,000万円を超えていました。その際、基本退職金に特別加算金が上乗せされ、総額で6,000万円が支給されました。当時の佐藤さんは、この資金力とディレクターという職歴があれば、同水準の条件での再就職は容易であると判断していました。
しかし、再就職活動は難航しました。佐藤さんは当時、港区のタワーマンションを1億2,000万円でフルローン購入しており、月々の返済額は管理費・修繕積立金を含めて45万円でした。再就職先が決まらない状態が2年続き、その間の住居費だけで1,080万円を支出。さらに、私立大学に通う長男の学費や、前年の高額所得に基づき課税される住民税(約250万円)などの支払いが重なり、蓄えは年間1,500万円以上のペースで減少していきました。
「年収2,000万円以下の求人には目もくれず、前職のプライドを優先したことが裏目に出ました。2年半が経過した頃には、手元の現金が2,000万円を切り、住宅ローンの維持が物理的に不可能になったのです」
経済的な困窮は、家族関係の破綻を招きました。マンションを任意売却し、残債を整理する過程で妻と意見が対立。結果として離婚に至りました。財産分与と解決金の支払いを経て、佐藤さんの手元に残った現金は500万円を下回りました。
現在は、知人の紹介で採用された不動産管理会社に契約社員として勤務しています。年収は350万円、手取り月収は約23万円です。家賃8万円の郊外アパートに住み、食費は月4万円以内に抑えています。
「デイトナを売ったのは、固定資産税の通知が来たのに手元の現金が足りなかったからです。通院費も必要でした。以前は、あの時計が腕にあるだけで『勝った』と思っていましたが、結局はただの道具でしかなかった。背に腹は代えられませんでした。一番の後悔は、稼いでいた頃にもっと家族との時間を大事にしたり、会社以外でも通用するスキルを磨かなかったことです。名刺を失って家族とも別れた今、私のスマホが鳴ることはもうありません」