「若手は忍耐が足りない」「いまの世代はワガママだ」早期離職のニュースが流れるたび、世間や親世代からはそんな声が聞こえてきます。しかし、本当に問題なのは「若手の根性」だけなのでしょうか? 実は、「若手の離職」「上司の不満」「親の不安」、そして「企業の停滞」まで、これら一見バラバラにみえる悩みはすべてつながっています。その正体は、世代間に横たわる「ITリテラシー格差」と、2029年に向けて加速する「経済・教育の地殻変動」です。単なる「世代論」で片付けていては、企業も家族も、来るべき荒波に飲み込まれかねません。なぜいま、すべての問題が集約されるのか。FP兼IT教育設計者の川淵ゆかり氏のもとに寄せられた相談事例から、その構造的なカラクリを解き明かしていきます。
「父さん、400万円貸して」役職定年で年収1,300万円が800万円に激減の55歳父、大手商社を半年で退職・実家でブラつく無職の24歳次男の“仰天発言”に激怒も…定職に就く長男が聞き出した「残酷な真実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

次男のその後

突拍子もなくみえた弟のアメリカ留学発言は、彼なりに考えた末の結論だったようです。弟の気持ちを理解した長男は、そっと肩を叩きました。

 

「親父も給料がだいぶ下がったらしいから大変なんだと思う。海外留学は諦めろよ。どうしても行きたいなら自分で金を貯めて行きな。その代わり、大学時代の友達がIT企業を立ち上げたから紹介してやるよ。年も近い奴らばっかりだからうまくいくかもしれない。うちの会社からも仕事を回す予定だからしっかりやれよ!」

 

父親世代・息子世代、そして企業におけるそれぞれの「現状の問題」はつながっている

特に若手にとって、いまは売り手市場かもしれませんが、原油高騰による不景気の影も忍び寄っています。不景気になったり、年齢を重ねたりすると、転職も難しくなる可能性が高いです。Aさんの次男のように、話が通じるITスキルを持つ兄がいなければ、彼は“転職ジプシー”として迷走していたかもしれません。

 

Aさんの次男は優秀な方ですが、こういった人たちがワガママからでは決してなく、企業内のIT格差の理由から転職を繰り返してしまうのは、企業だけでなく日本の損失だと切に感じました。もし、企業がIT教育を既存社員に行っていて、Aさんが長男のように次男の気持ちを理解できていたら、Aさんは400万円という金額に悩むこともありませんでしたし、次男も日本を脱出したいとまで思い詰めることもなかったでしょう。

 

イラン情勢など、地政学リスクが年々重要度を増すなか、企業がITスキル格差の問題をおろそかにすることは、企業の将来に致命的な影響をおよぼします。ホルムズ海峡封鎖という大きなリスクに対し、企業と従業員が一丸となって対応するためにも、まずは「共通言語」を持つことから始めるべきではないでしょうか。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表