中東情勢の悪化による原油高は、数ヵ月のタイムラグを経て、冷房需要が高まる夏の電気代・ガス代を直撃します。物価高への対策として補助金制度が再開される一方で、「一向に生活が楽にならない」という閉塞感から消費税減税を望む声も少なくありません。しかし減税案は、政府にとって容易に切れるカードではないのが実情です。今回は、いま私たちが知っておくべき経済の仕組みと家計の守り方についてFPの川淵ゆかり氏が解説します。
「消費税を下げてほしい」はもう無理…?ガソリン・電気代の補助金に消える“4兆円”。政府が減税に踏み切れない理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

今年の夏は「過去にない物価高」へ?電気・ガス代高騰と「補助金」への期待

イラン情勢悪化でガソリン代の高騰が気になりますよね。政府は3月19日からガソリン価格を全国平均で170円程度に抑えるため、補助金制度を再開すると表明しましたが、円安も進んでおり、家計としてはガソリン代以外の値上げも気になるところでしょう。

 

原油価格高騰は、数ヵ月遅れて電気代やガス代にも影響が出てきます。そして、その時期はちょうど今年の夏ごろになります。ホルムズ海峡封鎖の影響は大きく、事態が長引けば今年の夏も家計にとって非常に苦しい季節となるでしょう。暑い盛りを乗り切るため、ここでも電気代やガス代に対する政府の補助金再開が強く期待されています。

 

消費税減税が期待されるが…

そこで期待されるのが、「消費税減税」です。なかには、『まだかまだか』と期待している人も多いのではないでしょうか。ですが、減税にも補助金にも財源が必要です。日本の国債はすでに日本銀行が5割を引き受けています。一方で、10年を超える超長期債の主要な買い手である生命保険会社は、金利動向を警戒して購入に慎重な姿勢をみせており、現在は買い控えている状況です。

 

つまり、国債をいくら発行しても買い手がおらず、財源を簡単に作れない状態に陥っています。無理に発行を続ければ長期金利が上がりやすくなり、結果として住宅ローンの固定金利や企業の借入金利まで上昇してしまう恐れがあります。これは「景気が悪化しても、これ以上の金融緩和が打てない」ということを意味し、10年前の日本と比べても政策の舵取りがかなり難しくなっているのです。

日銀が無理に国債を買うと、どうなるか?

では、財源が足りないなら日銀がもっと国債を買えばいいのでは?と思うかもしれません。しかし、すでに国債の5割を購入している日銀がさらに購入を引き受けるとなると、市場のバランスが崩れてしまいます。

 

そうなれば、海外投資家は日本に財政不安を感じ、日本国債を一斉に売り出すでしょう。ここでも債券価格は下がり、長期金利が上昇する事態になりかねません。同時に円の信用もさらに落ち、円安が進行してより深刻な物価高を引き起こす危険性すらあります。