(※写真はイメージです/PIXTA)
兄に打ち明けた弟の本音
長男は休日に次男を連れ出しました。「お前、なんでまた就職もしないで、いきなり海外留学なんだよ。お前なら、まだ勤め先なんていくらでもあるだろ」と水を向けると、弟はぽつりとこぼしはじめます。
「うん、でも面接でさ、前の会社を辞めた理由を聞かれるんだけど、うまく答えられないんだよ」
「辞めたのには理由があるだろ。いじめか? パワハラか?」と兄が聞くと、「そんなんじゃないんだよ。上司も先輩も悪い人じゃないんだけど話が合わないんだよ。なんていうのかな、やり方が古臭いっていうか。変えたがらないっていうか、もっと効率的な仕事の仕方ってあると思うんだけど」と言い出しました。
「じゃあ、はっきり言えばいいじゃないか」と言うと、弟はため息をつきます。
「俺の言ってることがわからないらしくて、先輩から『お前、生意気だ』って目で見られちゃうんだよ。もう、日本の会社ってどこも同じじゃないかと思えてきてさ。うちの親父も同じタイプだろ。違う考え方の人たちに触れたくなったんだ。俺も1年で2回も転職しちゃって次は3回目じゃないか。こうみえても必死なんだよ」
コンサル企業に勤める兄は、弟の言葉にハッとします。自分もコンサル先で同じような経験を何度もしており、現場のDXもなかなか進まず、苦情を受けることもしばしば。弟の嘆きは、まさに彼自身が現場で感じていた“日本企業の限界”そのものだったのです。
社内でコミュニケーション問題が生じる根本原因
なぜ、このようなコミュニケーション不全が起きるのでしょうか。その背景には二つの大きな壁が存在します。
1.ITリテラシーの差
大学等でデータ活用やプログラミングを学んだ若手にとって、ITツールを使った効率的な業務遂行やデータに基づいた意思決定は「当然の前提」です。一方で、ITスキルにそれほど長けていない上司の場合、新しい技術への理解が乏しいことがあります。両者はそれぞれIT用語の理解度に差があるため、意思疎通自体が困難になることも。
2.業務遂行に対する価値観の違い
ITを活用した問題解決を学んできた若手は、非効率な手作業や慣例にとらわれた業務フローに違和感を抱きやすいでしょう。一方の上司は長年の経験やこれまでの慣習に基づいて業務を進めることを重視する傾向があり、ITを活用した新しいやり方への移行に抵抗を感じるケースがあります。このズレは、もはや「違う国の人」と話しているような感覚を生み出し、相手の言っていることや考え方がわからなくなっているのです。
企業でDXが失敗する問題にも通じる
これはDXの現場でも同様です。経営者が、Aさんの長男のような外部のITのプロに丸投げしても、現場の従業員が「なんでいままでと同じやり方じゃダメなんだ?」「よけい面倒なんだよ」などと拒絶すれば、DXは進みません。実際に失敗する企業は7〜8割に上るともいわれます。既存社員が共通言語としてのITスキルを植え付けて、同じ土俵で話ができるようにしなければ、企業はコストばかりを垂れ流すことになるでしょう。企業ごとにそれぞれのやり方がありますから、DX化現場の協力や知識がなければ、成功しません。