「若手は忍耐が足りない」「いまの世代はワガママだ」早期離職のニュースが流れるたび、世間や親世代からはそんな声が聞こえてきます。しかし、本当に問題なのは「若手の根性」だけなのでしょうか? 実は、「若手の離職」「上司の不満」「親の不安」、そして「企業の停滞」まで、これら一見バラバラにみえる悩みはすべてつながっています。その正体は、世代間に横たわる「ITリテラシー格差」と、2029年に向けて加速する「経済・教育の地殻変動」です。単なる「世代論」で片付けていては、企業も家族も、来るべき荒波に飲み込まれかねません。なぜいま、すべての問題が集約されるのか。FP兼IT教育設計者の川淵ゆかり氏のもとに寄せられた相談事例から、その構造的なカラクリを解き明かしていきます。
「父さん、400万円貸して」役職定年で年収1,300万円が800万円に激減の55歳父、大手商社を半年で退職・実家でブラつく無職の24歳次男の“仰天発言”に激怒も…定職に就く長男が聞き出した「残酷な真実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

決してワガママとは言い切れない若手の離職

優秀な人材ほど自身の成長機会や適正な評価を重視するため、ITスキルの格差がある環境では不満や停滞を感じ、早期に転職を検討します。ITエンジニアの7割以上が入社後にギャップを感じて退職を考えるというデータもあります。

 

さらに、「2029年問題」が追い打ちをかけます。2022年度から高校で必修化された「情報I」を履修した世代が、大学を卒業して社会に出てくる2029年。この世代はプログラミングやデータ分析の基礎を高校で学び、高いデジタルリテラシーを持っています。日本のIT人材不足は深刻です。経済産業省は2030年には最大79万人ものIT人材が不足すると予測発表しているなか、ITスキルのある若手の争奪戦は激化するでしょう。彼らを受け入れる体制がなければ、高いコストをかけて優秀な若手をせっかく獲得できたとしても、既存社員とのあいだに大きなギャップが生じ、Aさんの次男のケースのようにすぐ退職されては、企業の損失は計り知れません。

 

また、現在直面しているイラン情勢悪化のような地政学リスクは、サイバー攻撃のリスクも同時に増大させます。地政学リスクを前提とした経営戦略には、セキュリティをはじめとする従業員のITスキル教育が不可欠。なぜなら、現代のビジネス環境において、ITが経営のあらゆる側面に深く関わっているからです。地政学リスクが高まる複雑な世界情勢において、企業が持続的な成長を実現するためには、ITスキルを単なる業務効率化のツールではなく、経営戦略の根幹を支える要素として認識しなければなりません。

 

企業はIT人材の育成・活用が急務となります。企業側は、こうしたITスキル格差を解消し、若手社員が働きやすく成長できる環境を整備することが、早期離職を防ぐうえで重要です。

従業員が前向きにIT教育を受けるには

とはいえ、既存社員にIT教育を強いても反発は必至です。筆者が長年社会人向けに国家試験やプログラミングの指導をしてきた経験上、嫌がる人たちに最も有効なのは「お金の話」を絡めることです。

 

たとえば、現在はイラン攻撃の影響でガソリン高や物価上昇、為替や株価まで影響が出ていますよね。ホルムズ海峡封鎖では、今後の原料高騰に頭を悩ます企業も多いでしょう。つまり、従業員にとっても為替・金利・株価の知識は重要です。また、2029年という年は、変動金利型ローンの5年ルールである猶予期間が終了し、返済額がアップする年。プログラミング実習で「自分のローン計算」をしてもらうと、驚くほど前向きに取り組んでくれて、従業員の不安に寄り添う福利厚生にもなります。

 

離脱されない工夫をすることが重要です。

ITスキルがないと転職できない時代に

先日、みずほFGが事務職5,000人の削減を発表しましたが、特に2029年以降は「ITスキルがあって当たり前」の時代に突入するため、ほかの企業でも事務職などのホワイトカラーの削減は増え、ITスキルがないと転職も難しくなってくるでしょう。

 

AIの発達もすさまじいですから、企業だけでなくいまのうちに個人でもスキルアップしておかないと、収入ダウンと住宅ローン返済額アップのダブルパンチが待ち受けているかもしれません。