老後への備えとして蓄えてきた資産が、いざという時に自分を支えてくれるのは事実です。しかし、将来への不安から過剰に貯蓄を優先し続けた結果、肝心の「人生を楽しむ時期」を逃してしまうケースは少なくありません。ある男性のケースを見ていきます。
何のために生きてきたのか…74歳、貯蓄8,000万円の絶望。元・猛烈社員が、老人ホームの「入居一時金」を振り込む瞬間に咽び泣く、人生最大の誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

統計が示す高齢者の保有資産の実態

加藤さんのように、経済的な基盤がありながら「お金を使うタイミング」を逃してしまう高齢者は少なくありません。背景には、長年のデフレ経済や、将来への不透明感からくる「過度な予備的動機(貯蓄志向)」があります。

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査 2025年』によると、金融資産保有額は年齢とともに増えていき、60代でピークに達し、70代では平均値で12%減となっています。それでも70代の保有額は平均値で2,714万円、中央値で1,495万円と、現役世代である50代よりも大きな資産額を保有しています。

 

【金融資産保有額】

20代…683万円/260万円

30代…1,337万円/500万円

40代…1,840万円/828万円

50代…2,344万円/1,050万円

60代…3,087万円/1,775万円

70代…2,714万円/1,495万円

※数値左より、平均額/中央値

 

また同調査によると、「老後生活が心配である」と回答した割合は78.2%。年齢別に見ていくと、20~50代の現役世代は7~8割が「心配」と回答。さらに老後に突入した60代も74.0%、70代でも67.3%が「心配」と回答しています。

 

現役に比べて収入が大きく減る老後に対し、現役世代が不安を募らせるのは無理もありません。しかし、実際に老後の生活を実感している層であっても、その心配を拭い去れないのが現実です。

 

そのため、どんなに年を重ねようと「万一」に備えて資産を確保する考えから抜け出すことができないのでしょう。「人生を終えるときが一番お金持ち」と揶揄されるように、お金の使い時を逃している高齢者は、日本人の平均的な姿といえそうです。