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「残さない」親の選択と、子世代の期待
総務省統計局『家計調査家計収支編(2025年平均)』によると、2人以上の勤労世帯における収入は1世帯あたり約65万3,901円と前年から増加しました。しかし、実質的には物価上昇を考慮すると、手取りの満足感は十分とはいえない水準です。
また金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』では、老後資金の準備が依然として家計の最大関心事として挙げられています。老後への備えを最優先とする世帯が多い一方で、教育費や住宅ローン返済の負担も重く、現役世代の資産形成は「今を生きること」と「未来に備えること」のせめぎ合いにあります。
こうした背景から、中間層の子世代が、親の資産を「最終的なセーフティネット」だと無意識に捉えてしまう心理が生まれやすくなっています。特に住宅購入のような大きなライフイベントを控える世帯にとっては、親からの経済的支援や遺産の存在が、資金計画の頼みの綱になることも少なくありません。
国土交通省『住宅市場動向調査(2024年度)』によると、注文住宅の取得において「敷地を相続または贈与で受けた」割合は14.8%にのぼります。また住宅購入資金のうち、「住宅取得等資金の贈与」が平均142万円、遺産相続が317万円(ともに全国平均)となっており、親世代に経済的に頼っている層は一定数存在します。
親の資産は法的に本人のものであり、本人の意思で使う権利があります。しかし、子世代の家計環境が逼迫し、親の資産が心理的な支えになっている事実は見過ごせません。教育費や住宅ローンの高止まりは、親世代が資産を「残したい」と考えようとも、子世代がそれを「当然に期待してしまう」という認識のズレを生む大きな要因です。
遺産を前提にしない生活設計を立てるには、家族間での率直な話し合いだけでなく、社会全体で教育費負担や住宅取得支援をどう整備していくかという視点も不可欠になっています。