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奨学金利用と返済の“認識ギャップ”が生まれるワケ
背景には、奨学金を利用する時期と返済が始まる時期の生活環境の違いがあると考えられる。奨学金の利用が始まるのは学生のうち。さらに、生活費の多くを家庭が支えている場合、日々の支出を自分で管理する経験は限られていることも多い。そのため、将来の返済について具体的な生活イメージを持ちにくい側面がある。
一方、返済が始まるのは社会に出てからだ。家賃や食費、光熱費などを自分で負担しながら生活するなかで、毎月の固定支出としての奨学金返済を実感する人も少なくない。
この非対称性こそが、奨学金問題の本質の一つだ。奨学金制度の説明では手続き方法は丁寧に案内されるが、返済が始まったあとの生活を具体的に想像する機会は多くない。だからこそ重要なのが、制度の利用を開始する段階での情報提供と教育である。将来の収入見込み、生活費の試算、返済シミュレーション――。奨学金は進学の機会を広げる重要な制度だ。その価値を十分に活かすためにも、利用前の段階で将来の返済を見据えた判断ができる環境づくりが求められている。
同時に、社会に出たあとの支援も不可欠だろう。企業が従業員の奨学金返済を代わりに行う「奨学金代理返還制度」は現在少しずつ広がりをみせており、若者の経済的負担の軽減だけでなく、採用競争力の向上や定着率改善にもつながるとして関心が高まっている。毎月の返済に追われながらも自立して懸命に働く若者たちの現実を、「個人の努力不足」として片付けるのをやめるとき、初めて奨学金問題の真の解決に向けた一歩が踏み出せるのではないか。
大野 順也
アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長
奨学金バンク創設者