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「人の役に立ちたい」…明確な動機が生んだ、310万円の借り入れ
Aさんは岡山県出身の26歳。両親と、3歳上の姉がいる4人家族で育った。家庭は共働きで、特別に裕福ではないが、極端に厳しいわけでもない。それでも私立大学の費用を全額出してもらえる状況ではなく、母親からは「遠方の私大に行くなら奨学金を借りて」と言われた。父親も「ちゃんと返せるなら借りなさい」というスタンスで、強い反対はされなかった。社会の現実を知る父は、その先にある本当の厳しさを見抜いたうえで釘を刺していたのだ。
Aさんの進学の動機は明確だった。高校時代に身近な人の闘病を経験したことを機に、医療や福祉の現場で人を支える仕事がしたいと思うようになったこと。そこで、社会福祉士の資格が取れる関西の私立大学に進学し、福祉・心理系の学部で学ぶことに。
奨学金は日本学生支援機構の第一種(無利子)と第二種(有利子)を併用した。第一種だけでは月額が少なく、一人暮らしの生活費を賄いきれなかったためだ。第一種を月3万円、第二種を月5万円借り、4年間での総額は310万円になった。
「借りるときは、目標がはっきりしていたので、あまり迷わなかったです。なりたい仕事があって、そのための学費だと思っていたので。卒業して働けば返せるだろう、という感覚でした。返済額を細かく試算したことは、なかったですが」
姉も大学進学の際に奨学金を借りており、奨学金を借りることへの抵抗はあまりなかった。周囲にも借りている友人が多く、奨学金を「普通の手段」として捉えている空気感。福祉・医療の仕事に就けば安定して働けると思っていたし、返済が生活を圧迫するとは、その時点で具体的に想像することはできなかった。
苦労して就いた仕事の「給与水準の現実」
大学で社会福祉士の資格を取得し、関西の総合病院に医療ソーシャルワーカーとして就職した。患者や家族の相談に乗り、退院後の生活を支援する仕事だ。「大学で学んだことが直接活かせる、やりがいのある仕事」とAさんは話す。
しかし就職してすぐ、現実に直面した。福祉・医療職の給与水準の低さだ。社会人3年目となった現在、年収は320万円ほどで、手取りにすると月21万円前後。都市圏での生活費を賄いながら、月1万8,000円の返済が加わる。
「資格を取るために勉強して、借金して、就職した先の給与がこれかと、最初は正直ショックでした。仕事の内容は好きなんですけど、給与と返済のバランスが全然合っていない感じがずっとあります」
「もっと稼げる仕事に変われば返済は楽になるかもしれない」と、転職も考えたことがある。しかし、社会福祉士としてのキャリアを積むには現場経験が不可欠であるため、そのときは、いまの職場を離れることへの迷いが決断を妨げた。