日本の公的年金制度は、かつて「老後の生活を支える基盤」として国民に広く信頼されてきました。しかし、少子高齢化の加速や物価高騰、さらには現役世代の賃金低迷といった複合的な要因により、その神話は崩壊しています。平均的な元サラリーマンの実情をみていきます。
何かの罰だろうか…年金月17万円、それでも生活困窮。「公的年金に加入していれば老後は安泰」を信じた、77歳男性の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金額は増えても「実質目減り」の現実

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金(第1号)受給者の平均年金月額は、基礎年金を含めて15万1,142円。また65歳以上の男性の平均受給額は月額17万3,033円です。

 

さらに先月、厚生労働省から発表された令和8年度の年金額改定によると、国民年金(基礎年金)が1.9%の引き上げ、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなりました。これは4年連続のプラス改定です。

 

しかし現在、年金制度には「マクロ経済スライド」という調整の仕組みが導入されています。これは、社会情勢(現役世代の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に抑制するシステムです。

 

それにより、名目上の年金額は引き上げられますが、物価上昇率(3.2%)に対し、年金額の伸びは抑えられ、年金世代の家計は厳しい状況にさらされているのです。また、5年に1回の財政検証によると、将来的に年金受給額が今より2割目減りするのは確実とされています。以前いわれていた「年金さえしっかり払っておけば、老後は安泰」という神話は、完全に崩壊しているのです。

 

厚生労働省『国民生活基礎調査』によると、65歳以上の世帯において、生活が「苦しい(大変苦しい、やや苦しいの合計)」と回答した割合は55.8%と、半数を超えています。

 

佐々木さんのような「かつての標準的な会社員層」が、予想以上のインフレや住宅維持費の増大により、貧困層へと滑り落ちる「中流老人」の崩壊が顕在化しています。

 

このような年金世代を前に、現役世代が認識すべきは、公的年金はあくまで「生活の基礎」であり、それだけですべてを賄うという設計自体が、すでに過去のものであるという現実です。自助努力としての資産形成が必要なのは、いうまでもありません。