「Z世代をはじめとする最近の若手は、会社が決めたことに従わない」「制度を作っても、社員はどこか他人事で冷めている」もしそう感じるなら、それは彼らがわがままだからではなく、その決定プロセスに自分がいなかったからかもしれません。多くの企業では、評価制度や育成方針は経営陣や人事部が決め、現場には決定事項として降りてきます。しかし、これでは社員の心は離れる一方です。では、あえて未完成の状態で見せ、社員をその話し合いの場に招き入れたらどうなるか? 本記事では、上林周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)より、組織へのエンゲージメントを高める「参加の場」の作り方について解説します。
「基本給を高く設定するか」「若手のうちから成果主義にするか」…“Z世代”に評価制度の議論に参加させた〈驚きの効果〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

他部署の実態を知らなくて非効率に…

また、もう一つの事例として、問題意識を持った社員の呼びかけから始まった部門横断のセッションがあります。これは、ある5人のメンバーが「他部門の実態を知らず、シナジーが生まれていないことに課題がある」と感じたことをきっかけに、自ら全社の定例会の一部時間を使ってセッションを企画・実行したものです。セッションではまず、

 

1.各部門の「困りごと」や「やりがい」を可視化

2.その後、メンバーが他部門に“仮異動”して悩みをヒアリングするワーク

 

といった流れで進行されました。普段何気なくやりとりしていた他部門のメンバーに対して、「そんな苦労があった
んだ」「そういう価値観で動いていたんだ」といった気づきと尊重が生まれ、結果的に部門間の信頼や連携が飛躍的に向上したのです。この事例は、単に職位の高い人が動くのではなく、「現場で課題を感じた人が動き出す」ことの大切さを示す象徴的な取り組みでした。

 

もちろん、最初から完璧な制度や施策ができたわけではありません。しかし、自分たちで考え、決めて、改善していくプロセスそのものが、制度の定着を促し、「自分たちでつくる組織文化」になっていったのです。

途中入社のメンバーへのアプローチ

途中入社のメンバーに対しては、オンボーディング期間の3か月間にわたり、人事や経営との定期的な面談の中で「気になること」「感じた違和感」などをフィードバックしてもらう仕組みも設けています。こうした声を吸い上げる場があることで、早期から職場への参画意識が育ちやすくなります。そして、これらのベースには、日報などを通じて一人ひとりが全社に発信する機会が多く、常日頃から全体に自分の意見を発信することに慣れる環境があります。

 

一方で、こうした仕組みづくりには一定の難しさも伴います。たとえば、業務が忙しい中で時間を確保することが難しいという声もあるでしょう。また、意見を募ることで、「わがままな要望が増えるのではないか」「無理な期待を背負わされるのではないか」といった恐れを感じるマネージャーやリーダーも少なくありません。

 

だからこそ、取り組みが一過性のものにならないよう、内容や運用方法を定期的に見直し、形骸化を防ぎながら改善を重ねていく姿勢が重要です。こうして「きちんと運用され続ける場だ」という安心感が生まれることで、メンバーも自分の意見を託しやすくなります。仕組みが形骸化しないよう、内容や運用方法を定期的に見直しながら、継続的な改善を重ねていくことです。

 

自発的に関われる仕組みが整えば、メンバーの意見が場に流れ込み、職場が“みんなでつくる場所”へと変わっていきます。