「Z世代をはじめとする最近の若手は、会社が決めたことに従わない」「制度を作っても、社員はどこか他人事で冷めている」もしそう感じるなら、それは彼らがわがままだからではなく、その決定プロセスに自分がいなかったからかもしれません。多くの企業では、評価制度や育成方針は経営陣や人事部が決め、現場には決定事項として降りてきます。しかし、これでは社員の心は離れる一方です。では、あえて未完成の状態で見せ、社員をその話し合いの場に招き入れたらどうなるか? 本記事では、上林周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)より、組織へのエンゲージメントを高める「参加の場」の作り方について解説します。
「基本給を高く設定するか」「若手のうちから成果主義にするか」…“Z世代”に評価制度の議論に参加させた〈驚きの効果〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

最初からできる人はいない

新しくチームに加わった人が、初日から中心で活躍できることはほとんどありません。多くの場合、最初は何をしていいのかわからず、少し離れた場所から様子を見ているだけです。しかし、この「端っこ」での時間こそが、チームの文化をつかみ、成長していくための大切な第一歩になります。

 

このプロセスを理論として示したのが、文化人類学者ジーン・レイヴと社会学者エティエンヌ・ウェンガーの提唱した「正統的周辺参加」です。人の学びや成長は、知識を教わることよりも、共同体の一員として一緒に経験し、関わることで起こるという考え方です。人は教えられて変わるのではなく、共に場に関わる中で、自然と変わっていくのです。

 

たとえば職人の世界では、弟子が最初から技術を習うのではなく、掃除や道具の準備といった周辺的な仕事から始めます。そこで現場の空気や価値観に触れ、少しずつ中心に近づいていく。気づいたときには、共同体の一員として学びを内面化しています。これこそが正統的周辺参加の本質です。

 

現代の職場でも同じことが起きます。新人や異動してきたメンバーがすぐに成果を出せなくても、それは自然なことです。重要なのは、彼らが安心して「周辺から関われる」環境をつくること。たとえば会議の場で意見を聞いてみる、小さなタスクを任せてみる、気になる点を尋ねる。こうしたささいなアクションが、参加の入口になります。

 

共感型マネジメントにおいて、リーダーはこの「周辺からの参画」を支える存在です。すべてを指示するのではなく、一緒に考え、少しずつ任せていく。人は指示されて動くよりも、“巻き込まれて動く”ときに、本来の力を発揮します。だからこそ、共感型マネジメントに求められるのは、正解を教える人ではなく、一緒に成長していける場をつくる人です。そのような関わりが積み重なると、チームは上から動かされる集団ではなく、互いに影響し合い、学び合う「生きた共同体」へと変わっていきます。