「中学受験は親の受験」といわれるほど、保護者のサポートが不可欠な現在の受験シーン。しかし、その熱意がいつしか親自身の自己実現にすり替わってしまったとき、親子の溝は深まってしまうこともあります。ある母娘のケースから、親の過度な期待が子どもに与える長期的な影響と、現代の中学受験における「伴走」の在り方について、最新調査をもとに紐解いていきます。
「お母さんのコンプレックスを押し付けないで!」中学受験に全力を注いだ45歳母、合格から5年後に娘が放った「絶望のひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

7割が「受験して良かった」と答える一方で……浮き彫りになる親の感情

佐藤さんの事例は、決して特殊なものではありません。中学受験が過熱する現代において、親の熱意と子どもの主体性の乖離は、多くの家庭が抱える課題です。

 

マーケティング支援事業を手掛ける株式会社oneが2026年1月に実施した「中学受験に関する調査」によると、自身が中学受験を経験した人の70.9%が、大人になった今「受験して良かった」と肯定的に捉えています。その理由は「自信がついた(39.9%)」や「学力・勉強習慣が身についた(37.8%)」など、自身の成長を実感する声が目立ちます。

 

しかし、受験当時の心境を尋ねると、「よく分からないまま流されていた(30.2%)」や「できればやりたくなかった(27.3%)」という回答も少なくありません。特に親主導で“やらされた”感覚が強い場合、大人になってから「親の考えに複雑な思いを抱いている」といったネガティブな影響が残る実態も明らかになりました。

 

同調査の自由回答では、「親の劣等感を子どもで満たさないでほしかったと、大人になってから憎しみが強くなった」という、佐藤さんの娘と同様の切実な声も寄せられています。

 

また、親の心理についても興味深いデータが出ています。子どもに中学受験をさせた親に対し、当時の気持ちを尋ねたところ、「あくまで子どものための挑戦だった」と答えた人と、「子どものためと思っていたが自分の希望・感情も混ざっていた」と答えた人が、ともに41.8%で同率となりました。親自身が気づかぬうちに、自らの学歴やキャリアへの不満を、子どもの受験に投影してしまっている可能性が示唆されています。

 

さらに、準備開始時期の早期化も顕著です。親世代では「小学6年生」から準備を始めた人が52.4%と過半数でしたが、現在の子ども世代では「小4」や「小5」から開始する割合が計43.6%にのぼっています。準備期間が長期化するなかで、親の関与は「健康管理や塾の送り迎え(47.9%)」や「メンタル面のサポート(37.6%)」といった「伴走型」が主流となっています。

 

中学受験は、適切な距離感でのサポートがあれば、子どもの自己肯定感を高める大きな糧となります。しかし、一歩間違えれば、将来にわたる親子関係に深い傷跡を残しかねません。親が自らの抱える「期待の正体」を客観的に見つめ直すことこそが、令和の中学受験において最も求められる資質なのかもしれません。

 

[関連資料]

株式会社one『親と子の立場で振り返る【中学受験に関する調査】 中学受験経験者の7割「受験して良かった」一方、親主導で“やらされ感”があると大人になっても嫌な思い出に?』