(※写真はイメージです/PIXTA)
管理費高騰、震災の記憶……悩み多きタワマン生活からの「大逆転」
「結果として、最高のタイミングで手放せたと思っています。あのまま住み続けていたら、修繕積立金の負担と、将来への不安で押しつぶされていたかもしれません」
長年勤めた大手企業を定年退職した田中博史さん(60歳・仮名)。田中さんは約18年前、開発が進み始めていた東京・湾岸エリアに新築のタワーマンションを購入しました。価格は7,800万円。月の返済額は22万円ほどでした。「タワマン=成功者」というイメージから、周囲から羨望の眼差しを向けられたこともあったといいます。
しかし、実際に住んでみると、華やかな生活の裏側で「想定外のコスト」が家計を圧迫していきました。
「新築で購入した当初、管理費と修繕積立金の合計は月額2万円程度でした。それが売却する直前には、合わせて6万円近くまで跳ね上がりました。月々のランニングコストがじわりじわりと上がっていくのは、正直、大変でした」
国土交通省『マンション総合調査(令和5年度)』を見ても、完成年次が古いマンションほど修繕積立金の月額が高くなる傾向が出ています。特にタワーマンションのような大規模物件では、大規模修繕工事に向けた積立不足が顕著になるケースが散見されます。田中さんのマンションも例外ではありませんでした。
「長く住んでいる人の間では、資産価値維持のために値上げはやむを得ない、という雰囲気もゼロではありませんでした。しかし、賃貸に出している投資家さんや、中古で購入した若い世帯からは強い反発がありました。ある年の理事会では『管理会社の見積もりが高すぎる』『無駄な共用サービスを見直すべきだ』と意見は平行線をたどって……」
さらに、田中さんの決断を後押ししたのが、東日本大震災の記憶と、自身の年齢でした。
「12階に住んでいましたが、あの時の船酔いのような揺れはトラウマです。エレベーターが1週間ほど止まり、階段での生活を余儀なくされました。当時は40代でしたが、60代、70代になってあれをもう一度経験するのは体力的に無理だと感じたのです」
こうして定年を機に郊外への移住とマンション売却を決意した田中さん。その原資は2,800万円ほどの退職金でした。タワマン生活は維持費や災害リスクなどネガティブな要素も目立ったことで、マンションの売却価格については「新生活に向けて足しになれば」くらいの感覚だったといいます。しかし査定に出した瞬間、状況は一変します。
「近年の湾岸エリア人気と不動産市況の高騰のおかげで、最終的には購入価格を5,000万円近く上回る金額で売却できました。管理費の高さに悩み続けましたが、その分、資産価値もしっかり上がっていた。まさに『終わりよければすべてよし』です」
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