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4 ―― 総括:物価変動を早期に反映する仕組みと賃金や加入者の変動を平準化する仕組みが奏功。ただし、年金額の伸びが物価の伸びや賃金の伸びを下回る点には再認識が必要
本稿では、別稿で確認した年金額改定のルール(図表1)が、2025年度分の改定でどのように機能したかを確認した。その要点は、次のとおりである。
● 本来の改定率の計算過程では、2024年(暦年)の物価上昇率が即時に反映された。
● 本来の改定率の計算に用いる実質賃金変動率は2~4年度前の平均であるため、3~2年度前のマイナスが4年度前のプラスで緩和された。
● 実質賃金変動率はマイナスとなり、67歳以下と68歳以上の本来の改定率がともに賃金変動率となった。
● 年金財政健全化のための調整率(いわゆるマクロ経済スライドの調整率)も2~4年度前の平均であるため、コロナ禍が年金額に与える影響を抑えられた。
● 本来の改定率が前年の物価上昇を反映して一定程度のプラスになったため、年金財政健全化のための調整率はすべて反映された。
● この結果、2025年度の調整後の改定率(実際に適用される改定率)は、67歳以下と68歳以上の双方で3年連続の増額になったが、調整率の適用により年金額は3年連続で目減りした。
物価の上昇が続く中、年金額が3年連続で増額された点は、朗報と言えよう。また、改定率の計算過程に3年平均を取る仕組みが入っていたことで実質賃金の変動やコロナ禍の影響を抑えられた点も、制度設計の恩恵を受けたと言えよう。
一方で、年金額の実質的な価値が3年連続で目減りする点には、注意する必要がある。特に2025年度の改定においては、賃金変動率が物価変動率よりも低いものの、本来の改定率がプラスだったため、物価変動率よりも低い賃金変動率からマクロ経済スライドの調整率が差し引かれている。その結果、マクロ経済スライド適用後の改定率と物価変動率を比べれば、物価変動率と賃金変動率の差(-0.4%)とマクロ経済スライドの調整率(-0.4%)を合わせた-0.8%分が目減りする形になっている。
本来の改定率の特例は現役世代とのバランスを取るための仕組みであり、マクロ経済スライドは少子化や長寿化に対応するための仕組みとは言え、公的年金が収入の大半を占める高齢世帯にとっては厳しい改定となった。現役世代の賃金の伸びも物価の伸びに追いついていない中ではあるが、年金額の伸びは賃金の伸びよりも低いことや、その原因は現役世代の保険料率を固定するために導入されたマクロ経済スライドにあることを、改めて認識する必要があるだろう。