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2025年度に「翌年度へ繰り越される調整率」が発生しなかった背景
調整率の計算に使用される公的年金加入者数の変動率(図表6の⑤の列)は、2~4年度前の平均である。ここで言う公的年金の加入者は、国民年金の第1号被保険者と厚生年金の被保険者と国民年金の第3号被保険者であり、年度内の各月末の人数を平均した値(年度間平均)が用いられる。公的年金の加入者数が国民年金の第1~3号被保険者の合計となっていないのは、国民年金の第2号被保険者には厚生年金被保険者のうち65歳以上の人(老齢基礎年金の標準的な受給開始年齢以上の人)が含まれないためである。国民年金の第1号被保険者と第3号被保険者の対象年齢は20~59歳だが、厚生年金被保険者の対象年齢は69歳までであるため、高齢期の就労が進展して60代の厚生年金加入者が増えれば公的年金加入者数は増加する可能性がある10。
10 なお、パート労働者等に対する厚生年金の適用拡大によって20~59歳の厚生年金加入者が増加しても、公的年金の加入者数には影響しない。20~59歳で厚生年金に加入する人は、国民年金の第1号または第3号被保険者からの移行であり、厚生年金に加入する前から公的年金の加入者数に含まれているためである。他方で、厚生年金の適用拡大によって60代の厚生年金加入者が増えれば、公的年金加入者数の増加に寄与する。実際に、厚生年金加入者のうちパート労働者(短時間労働者)の性・年齢分布を見ると、特に男性においては60代の比率が高い。しかし、厚生年金加入者のうち短時間労働者の60代は男女計で16万人に過ぎないため、公的年金加入者数全体(約6700万人)に対しては限定的な影響に留まる。
2025年度の当年度分の調整率には、2021~2023年度の公的年金加入者数の変動率の平均が使用される。4年度前にあたる2021年度はコロナ禍の影響があったためか微減となったが、3年度前にあたる2022年度と2年度前にあたる2023年度は、過去の少子化の影響を受ける一方で60代の厚生年金加入者の増加等によって公的年金加入者数が概ね横ばいだった。その結果、3年度平均では-0.1%になった(図表6の⑤の3年平均の列)。
これに引退世代の余命の伸びを勘案した率(-0.3%、図表6の⑥の列)が加味され、2025年度の当年度分の調整率は-0.4%となった(図表6の⑤+⑥の列)。2025年度には前年度から繰り越された調整率がなかったため、この-0.4%が2025年度に適用すべき調整率となった。
そして、前述のように、本来の改定率が67歳以下と68歳以上の双方で+2.3%で、調整率が-0.4%だったため、67歳以下と68歳以上の両者とも図表4の「原則」に該当して調整率がすべて反映され、2025年度の調整後の改定率(実際に適用される改定率)は、67歳以下も68歳以上も+1.9%となった(図表6の⑧の列)。また、67歳以下と68歳以上の両者とも調整率がすべて反映されたため、翌年度に繰り越される調整率は発生しなかった(図表6の最右列)。
