(写真はイメージです/PIXTA)
2025年度の「改定率」で注目すべき2つのポイント
2025年度の改定率の計算では、賃金変動率が+2.3%、物価変動率が+2.7%となったため、特例のルールが適用された。この結果、本来の改定率は、67歳以下と68歳以上の双方で、賃金変動率の+2.3%となった3。
3 厳密には、「67歳以下」は「67歳になる年度まで」、「68歳以上」は「68歳になる年度から」を指す。以下同じ。
2025年度の第1の特徴は、本来の改定率が一定程度のプラスとなった点である。別稿で確認したように(図表1)、年金額の改定で用いられる賃金変動率には、物価の変動になるべく早く対応できるよう、前年(暦年)の物価上昇率が組み込まれている。このため、67歳以下と68歳以上の双方で、2024年(暦年)の物価上昇を反映して、一定程度のプラスの値となっている。
第2の特徴は、本来の改定率が物価変動率を下回った点である4。67歳以下の本来の改定率は、年金の標準的な受給開始年齢(65歳)に到達するまでの賃金変動、すなわち現役世代の生活水準の変化を年金額に反映させるため、常に賃金変動率が使われる。
4 2000年改正以前は、年齢を問わずに、毎年度の年金額は物価上昇率に連動して改定しつつ、約5年ごとの法改正によって過去5年分の賃金変動率を改定率に反映しており、長期的には賃金に連動する仕組みだった。しかし、2000年改正では、少子化や長寿化による財政バランスの悪化に対応するため、諸外国の中には受給開始後の年金額を物価水準の変化に連動する国があることが参照される形で、受給開始後(65歳以後)の年金額は賃金の伸びよりも低い物価の伸びに合わせて改定することになった。その後、2004年改正で前年(暦年)の物価上昇率と実質賃金変動率の2~4年度前の平均を合わせた名目手取り賃金変動率が適用される形になったことに伴い、改正前と同様に64歳時点までの賃金変動率が年金額に反映されるよう、物価の伸びに合わせて改定するのは68歳以降になった。
これに対して68歳以上では、原則として、年金額の購買力を維持しつつ年金財政を改善するために、物価変動率が使われる5。しかし、物価変動率が賃金変動率よりも高い状況(図表2の特例)では、現役世代が物価の伸びよりも低い賃金の伸びで苦しんでいるため、世代間のバランスを考慮して、特例として68歳以上も本来の改定率に物価変動率よりも低い賃金変動率を使うことになっている(2021年度から)。2024年度に続き2025年度も、この特例に該当した。
5 賃金変動率が物価変動率を上回る状況では、改定率に物価変動率を使うことで、年金財政の支出を左右する年金額の改定率が年金財政の保険料収入を左右する賃金変動率よりも低くなるため、年金財政が改善する方向に働く。