(※写真はイメージです/PIXTA)
父の死後、実家に残された「時限爆弾」
地方の古い一軒家。父(享年78)の葬儀が終わり、親族が帰ったあとの実家には、重苦しい沈黙が流れていました。
長男のケンイチさん(48歳・会社員)と、長女のユミさん(45歳・パート主婦)。そして、部屋の隅で小さくなっている次男のヒロシさん(43歳・無職)。この3人が、子どもたちです。
ケンイチさんとユミさんはすでに独立し、それぞれの家庭を持っています。一方のヒロシさんは大学卒業後、就職活動に失敗。数ヵ月のアルバイトを経験したものの、人間関係のトラブルから退職し、以来20年近く、実家で引きこもり生活を続けてきました。母はすでに他界。父の月18万円の年金がヒロシさんの生活を支えていました。
「兄さんは長男でしょ」「お前は実家が好きだろ」ケンイチさんとユミさんがそれぞれに主張します。
「この家、どうする。築45年だし、売っても二束三文にしかならないぞ。それに、ヒロシだ」
ヒロシさんは俯いたまま、なにもいいません。視線は泳ぎ、身体は小刻みに震えています。
「俺は無理だぞ」ケンイチさんは先手を打ちました。「上の子が大学受験、下の子も私立だ。家のローンもあと20年ある。妻もパートに出てやっと回してるんだ。ヒロシを引き取る余裕なんてない」
矛先は長女のユミさんに向きます。「ユミ、お前の旦那さん、大手だし余裕あるだろ?」
ユミさんは即座に首を横に振りました。「なにいってるの。うちは旦那が財布の紐を握ってるのよ。それに、私は嫁に出た身だよ? 本来なら長男のお兄ちゃんがみるべきじゃないの?」
「いや、いまはそんな時代じゃないだろ。俺だってカツカツなんだよ!」
「じゃあ、生活保護?」「いやいや、それは世間体が悪すぎるだろ……」
言い争う兄と姉。その間、ヒロシさんはまるで自分事ではないかのように、ただ時が過ぎるのを待っています。その態度が、余計に二人の苛立ちを煽りました。