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高級老人ホームなら安心…その「幻想」が崩れた瞬間
都内のメーカーに勤務する田中由美さん(45歳・仮名)は、半年前に高級有料老人ホームに入居した母・佐藤タカコさん(78歳・仮名)について、「まさか3ヵ月で退去することになるとは思いませんでした」と語ります。
まずは、入居を決めたきっかけについて由美さんに伺いました。
「父が3年前に他界してから、母は実家で1人暮らしをしていました。もともと内気な性格で、近所付き合いもそれほどありません。『一人は寂しい、何かあった時に不安だ』と口にするようになり、私も仕事が忙しく頻繁には実家に帰れないため、安心できる施設への入居を提案したのです」
気になるのが費用面です。高級ホームとなればそれなりの金額になりますが、どのように工面していたのでしょうか。
「基本的に母が出しています。年金は月16万円ほど。入居したホームの一時金は2,000万円で、月額費用は管理費や食費を含めて30万円を超えます。貯蓄を取り崩して対応していますが、そのうち実家も売却して備えようと言っていました」
数ある施設のなかで、なぜそのホームを選んだのか、決め手は何だったのでしょうか。由美さんは「第一印象が圧倒的によかった」といいます。
「見学に行った際、ホテルのようなエントランスや、手入れの行き届いた日本庭園に圧倒されました。食事もレストランのようなコース料理が出ると聞き、老人ホームという概念が覆りましたね。『高級なところなら、入居者の方々も上品で落ち着いた人が多いだろう』という安心感もありました」
しかし、その期待は裏切られます。3ヵ月で退去を決意するに至った決定的な理由、それは入居者との「人間関係」でした。
由美さんが異変に気付いたのは、仕事の繁忙期を終え、2ヵ月ぶりに面会に訪れた日のことでした。昼食時のダイニングルームに行くと、他の入居者が談笑するなか、タカコさんが柱の陰の席で1人、背中を丸めて食事をしていたのです。
「私を見るなり、母は『もう家に帰りたい』と涙を流して。話を聞くと、そのフロアには『ボス』的な存在の女性入居者がいて、うまくいっていないようで。母が入居直後、知らずにそのグループが『指定席』としている窓際の席に座ってしまったのがきっかけらしいのですが……」
入居早々、「空気が読めない新しい入居者」という烙印を押され、ギクシャクするように。タカコさんは「高いお金を払ってもらっているから」と娘に相談できず、居室に引きこもるようになっていたのです。
「スタッフの方も『相性がありますから』と介入には消極的でした。まさか老人ホームで、学校のような人間関係に悩むとは思いませんでした」