定年退職は、人生の大きな節目です。現役時代からの解放感とともに、まとまった退職金を手にし、「これからは自分のために生きたい」と夢を膨らませる人も多いのではないでしょうか。しかし、その高揚感のなかで下した決断が、長年連れ添ったパートナーとの関係に決定的な亀裂を生じさせてしまうことがあります。ある夫婦のケースをみていきます。
「もう妻は口をきいてくれない…」退職金1,500万円をつぎ込み“男の隠れ家”を造った65歳元管理職…完成から1カ月、防音室で震える「誤算」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「退職金は頑張ってきた自分へのご褒美」の意識が招く夫婦の不和

定年を迎えた夫と、支えてきた妻。熟年夫婦の間で起こりがちな「報われ方の不均衡」は、よくあるパターンです。夫側は「40年間の労働=金銭的報酬(退職金)」を得て、それを自分の功績として形に残そうとします。しかし、妻側にとっての40年間は、家事や育児という「無償労働」の積み重ね。夫が退職金を「俺のもの」と主張し、自分だけの楽しみに巨額を投じた瞬間、妻は「私の40年は何だったのか」という虚無感に襲われるでしょう。

 

【大卒サラリーマン勤続年数別・平均退職金】

勤続20~24年:1,021万円

勤続25~29年:1,559万円

勤続30~34年:1,891万円

勤続35年以上:2,037万円

出所:厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

 

夫婦とはいえ、意識の差があるのは当然のこと。それでも夫婦円満を維持できるかどうかは、「会話の時間」が関係してくるようです。明治安田生命保険相互会社『「いい夫婦の日」に関するアンケート調査』によると、「夫婦仲が円満」と回答した人は78.4%。また「夫婦円満のために必要なこと」としてトップだったのは、「よく会話する」(49.3%)でした。さらに夫婦仲が円満な人の休日1日あたりの会話時間は、約4時間30分に対し、夫婦仲が円満でない人は約50分。実に5倍以上もの開きがありました。

 

母屋と離れで、それぞれが“自分のための空間”を設けてしまった中山夫婦。関係修復はなかなか難しそうです。

 

[参考資料]

明治安田生命保険相互会社『「いい夫婦の日」に関するアンケート調査』(2025年)