「選ばれた人」の証であるステータスカードや、煌びやかなタワーマンションでの暮らし。年収1,000万円を超える高収入層といえば、誰もが経済的に満たされた優雅な日々を想像するものです。しかし、高額な収入があるからといって、必ずしも家計が盤石であるとは限りません。ある男性のケースをみていきます。
 「ついに俺も選ばれたか…」ポストに届いた“漆黒の封筒”に震えた52歳夫…年収1,600万円・タワマン暮らしの末に見た「預金残高30万円」の絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収1,000万円超でも1割は「貯蓄ゼロ」という現実

田中さんのように、高収入でありながら資産形成ができていないケースは、決して珍しいことではありません。

 

【年収1,600万円のサラリーマンの手取り月収(52歳/東京在住)】

額面収入:950,000円

手取り額:632,000円

(内訳)

所得税:130,833円

住民税:68,471円

健康保険:46,081円

厚生年金:59,475円

介護保険:7,440円

雇用保険:5,700円

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』によると、世帯年収が高くなるほど金融資産(預貯金や有価証券など)の保有率も高まりますが、年収1,200万円以上の世帯でも保有率は100%ではありません。

 

9.7%の世帯が、「金融資産は保有していない」と回答しています。つまり、高収入であっても10人に1人は「貯蓄ゼロ」の状態にあるといえるのです。

 

なぜ、稼いでいるのにお金が残らないのでしょうか。ここには「パーキンソンの法則」と呼ばれる心理が働いていると考えられます。

 

これは「支出の額は、収入の額と等しくなるまで膨張する」という法則です。収入が増えると、無意識のうちに住居、車、教育、食事といった生活水準を全体的に底上げしてしまい、結果として手元に残る金額が変わらない、あるいはマイナスになってしまうというものです。

 

特に田中さんのような50代は、役職定年による収入減や、親の介護、子どもの独立資金など、支出の波が激しくなる時期でもあります。

 

このタイミングで高額な年会費のかかるクレジットカードを持つことは、家計の固定費をさらに圧迫し、老後破綻へのスピードを加速させる要因になりかねません。 ブラックカードのインビテーションを捨てたという田中さん、賢明な判断だったといえるでしょう。

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』