親の介護が必要になったとき、多くの人は「プロに任せる安心」や「整った環境」を優先して施設を選びがちです。しかし、十分な資金を投じて最善を尽くしたつもりでも、後になって深い悔いが残ることも少なくありません。 ある夫婦のケースをみていきます。
「母さん、ごめん」入居金1,800万円・高級老人ホームに母を預けた53歳長男……通夜の席で施設長から聞かされた「残酷な真実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「自分がされたい介護」と「親にしてあげたい介護」の決定的なズレ

ハルメク生きかた上手研究所が、50~87歳の女性474名を対象に実施した「介護に関する意識・実態調査」(2025年11月6日公表)によると、親の介護に直面したとき、親世代と子世代との大きなギャップが存在することがわかりました。

 

まず、「自分が介護される場合、生活を送りたい場所」として最も多かったのは「自宅」で約4割でした。住み慣れた家で最期まで過ごしたいという思いが強いことがわかります。 一方で、「家族を介護する場合、生活を送ってもらいたい場所」を聞くと、約7割が「介護施設」を希望しています。いざ介護する立場になると、負担軽減や安全確保のために、プロの手を借りたいと考えるのは自然なことでしょう。

 

高橋さんが実母を高級ホームに預けた判断も、この「介護する側の論理」としては間違っていなかったといえます。同調査でも、自身の介護は「ヘルパーなどの第三者」にされたいという回答が62.2%でトップとなっており、親世代も決して「子どもに下の世話をさせたい」わけではないのです。

 

しかし、問題は「施設に入れた=親孝行完了」と考えてしまう点にあります。調査結果にも表れている通り、親の本音は「自宅のような安らぎ」を求めています。 施設を利用するとしても、高橋さんが現在、義母に対して実践しているような「頻繁な面会」や「手料理」といった家族ならではの情緒的なサポートがあって初めて、施設は単なる「収容場所」ではなく「第二の我が家」になり得るといえるでしょう。

 

物理的なケアはプロに任せつつ、心のケアは家族が担う。そのバランスを見つけることこそが、後悔のない介護への近道といえそうです。

 

[参考資料]

株式会社ハルメクホールディングス『【介護に関する意識・実態調査】「自分は自宅で」「家族は施設で」 介護の理想と現実のギャップが浮き彫りに』