日本の生涯未婚率(50歳時の未婚率)は上昇の一途、国立社会保障・人口問題研究所の最新データによると、男性の約4人に1人が生涯独身であると推計されています。かつてのような「結婚=当然の通過儀礼」という価値観は薄れ、独身であることは個人の自由な選択として尊重される時代になりました。しかし、その「自由」がふとした瞬間に別のものへと変わることがあります。特に、仕事での成功を収め、経済的にも恵まれた男性ほど、中高年に達したときに想定外の孤独感に襲われるケースが少なくありません。実例をみていきましょう。
「結婚、しておけばよかった」月収100万円・53歳独身男性、夢も社会的地位も手にしてタワマンから東京の喧騒を見下ろす生活。最高の自由を手にしたはずが…ふと悟った深い後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

独身男性の健康リスク

統計的にも、独身男性の健康リスクは既婚男性に比べて高いことが指摘されています。文部科学省が助成した大規模コホート研究(JACC Study)では、独身男性は既婚男性と比較して、循環器疾患での死亡リスクが約3倍、全死亡リスクでも約2倍高いという衝撃的なデータが出ています。

 

その背景には、食生活の乱れや喫煙・飲酒といった生活習慣の問題に加え、社会的孤立による精神的ストレスが大きく関わっていると考えられています。レイジさんも、健康診断で血圧と肝数値の悪化を指摘されていましたが、「まだ大丈夫」と高を括っていました。しかし、精神的支柱を失ったいま、自身の健康への不安が、より具体的な恐怖として迫ってきたのです。

 

「もしいま、この部屋で俺が倒れたら、誰がみつけてくれるんだろう?」

 

オートロックで守られた高セキュリティのマンションは、外部との接触が遮断されやすいです。隣人ですらまともに挨拶もしないこの場所で、もしもの事態が起きたとき、発見されるのは数日後、あるいは数週間後かもしれません。

結婚の価値観

忌引が明け、出社したレイジさんは、既婚の部下が「今週末は実家に帰って大変でしたよ~」と愚痴を零すのを、羨ましい気持ちで聞いていました。以前なら「そんな面倒なこと、よくやるな」と他人事でしたが、いまは「帰る場所がある人の余裕」に聞こえるのです。

 

もちろん、いまから婚活を始めることも不可能ではありません。しかし、50代からのパートナー探しは、20代、30代のころとは違った難しさがあります。長年染みついた「自分ファースト」の生活習慣を大きく変えることは容易ではありません。

 

それでも、レイジさんは考えを改めはじめています。「若いころは、自由がたまらなく楽しかったんです。誰にも縛られず、思い立ったらすぐに動ける。その身軽さが武器であり、誇りでした。しかし、年を取ってからはそうはいきません。体力が落ち、無理がきかなくなり、残された時間が減っていくなかで味わう自由は、孤独と同じと痛感しました」

 

レイジさんは最近、週末の過ごし方を変えました。重い腰を上げて、ミドルシニア向けの結婚相談所に登録したのです。ただし、条件は少し特殊です。「家事をしてくれる人」でも「若い人」でもありません。「お互いに自立していて、別居婚や週末婚といった、適度な距離感を許容できる人」です。

 

介護してほしいわけでも、身の回りの世話をしてほしいわけでもない。ただ、美味しいものを食べたときに「美味しいね」と共感できて、相談したときには損得なしの意見をいってくれる。そんなパートナーを探しはじめました。「毎日一緒じゃなくていい。でも、自分と深く繋がっている誰かがいる。それだけで、夜の景色が違ってみえる気がするんです」 彼はいま、人生の後半戦を並走してくれる人を探しています。

 

生涯未婚を選ぶことは、決して間違いではありません。しかし、その選択の先には、若いうちにはみえなかった景色が広がっています。「自由」と引き換えに手放したものがなんだったのか。それに気づくのが、取り返しのつかない年齢にならないよう、「本当の豊かさとはなにか」一度立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。