老後資金は十分に備えているから安心――そう考えている人は多いでしょう。しかし高齢者の生活には、お金だけでは解決できない深刻な問題が潜んでいます。年末に住まいを失ったある高齢男性のケースをみていきます。
〈年金月18万円〉〈貯蓄2,000万円〉あるのに…75歳・独身男性「惨めです。」寒空の繁華街、ファーストフード店で夜を明かした理由

「金があっても借りられない」高齢者入居差別の現実

株式会社R65の調査(2025年)によると、65歳以上の「部屋探し」について、その理由のトップは「適切な広さへの住み替え」で36.2%。「家賃の低い物件への住み替え」が23.6%で続き、「立ち退き」は16.4%でした。

 

そして65歳を超えて賃貸住宅を探した際、「苦労した」と回答したのが42.8%。15.6%は「とても苦労した」と答えています。そして「年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験がある高齢者」は30.4%と、3人に1人の水準に達しています。

 

高齢者が賃貸物件を借りづらいのは、高田さんが直面した通り、「孤独死による事故物件化への懸念」や「家賃支払いの不安(保証人の欠如)」が主たるもの。預貯金の多寡に関わらず、「高齢・単身」という属性だけで、賃貸市場からはじき出されてしまうリスクが高いのです。

 

住宅セーフティネット法の改正などにより、高齢者の賃貸入居環境は改善の方向にあるといわれていますが、まだ入居拒否の割合は多いというのが現実です。

 

最終的に高田さんは、自治体の福祉窓口に相談しつつ、何とか自力で家が借りられたといいます。その間、ファーストフード店や漫画喫茶、カプセルホテルなどを渡り歩いたそうです。 「もう二度と引っ越しはしたくない」と語る高田さん。終の棲家をどう確保するかは、元気なうちから対策を講じておかなければならない、喫緊の課題といえるでしょう。

 

[参考資料]

株式会社R65『高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)』