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半数以上が「親をがっかりさせたくない」
株式会社スプリックス/SPRIXが2025年11月に発表した「中学受験に関する調査」によると、受験経験のある子どもに対し、勉強の目的を尋ねたところ、半数を超える50.5%が「親をがっかりさせたくないから」と回答しました。さらに「勉強で努力したり、いい成績をとると親が喜んでくれるのがうれしい」(44.7%)と続き、中学受験において、勉強そのものの楽しさや自分の達成感よりも親の気持ちを優先していることがわかります。
さらに「勉強で先生や親の期待に応えるのがストレスに感じるときもある」という回答が32.0%と、約3人に1人が大人のプレッシャーをストレスに感じています。その事実は、受験が終わって何年も経ってから、親に重い十字架としてのしかかることがあります。
「志望校に合格したときのあの笑顔も、私を安心させるためだったのかもしれない。本当は受験だってしたくなかったのかもしれない……そう思ってしまったんです」
食卓に沈黙が流れました。夫の健一さんも、止めに入らなかった自分を恥じ、下を向いていたといいます。 しかし、その沈黙を破ったのは、他ならぬ和人さんでした。
「でも勉強は嫌いだったけど、毎晩遅くまで勉強に付き合ってくれたのは嬉しかったし、夜食のおにぎりが美味しかったのも覚えている。父さんも必ず塾まで迎えに来てくれた、仕事で忙しかったのに」
そして、少し照れくさそうにこう続けました。
「あのときお父さんも、お母さんも、一緒に頑張ってくれたから、今の自分があるのは間違いない。良い学校に進学できて、良い会社に就職できたのも、中学受験で頑張ったからだと思ってる」
そして「これまでありがとう」と伝えてくれたといいます。その言葉を聞いた瞬間、由美子さんが抱き続けた呪縛が解けた気がしたといいます。
「『ごめんね』と謝る私に、息子は『なぜ謝るの。頑張ったのは僕なんだから』と笑っていました。本当に優しい子に育ったなと、誇らしい気持ちになりました」
中学受験は本人の意志よりも親のエゴが先行しがち。そこに行き過ぎた教育があり、心残りがあることもあるでしょう。しかし佐藤さん夫婦の場合、中学受験時にできた子育ての後悔をしっかりと精算できたようです。
[参考資料]
株式会社スプリックス/SPRIX『「中学受験は親子の重圧に?」SPRIXが中学受験の課題を明らかにする調査を発表。受験の本質を問う「#中学受験は健全か」プロジェクト始動』